高速道路「逆走事故」はなぜ減らないのか? 年間200件超! 高齢者7割が陥る「魔の構造」、対策の狭間で繰り返される悲劇を考える
					2025年、東北自動車道の逆走事故で死者3人を含む14人が負傷。NEXCOのデータでは逆走件数は減少傾向も依然高水準で、75歳以上が約半数を占める。複雑なIC構造と高齢ドライバー増加が背景にあり、構造改善や高齢者対策、最新技術の導入が急務だ。				
				
				安全投資の費用対効果

日本は現在、高速道路の逆走撲滅を最終目標として掲げている。しかし、それを実現するには理念だけでは不十分だ。ドライバーと、道路インフラの設計・維持管理を担う事業者や行政の双方が、実務ベースで責任を共有する必要がある。
高速道路は通行料を財源とする使用者負担型インフラであり、無料化は現実的でない。したがって、通行料が安全対策にどの程度貢献しているかの検証は避けられない。
例えば、逆走警告装置や動的標識の導入にかかる予算と、その効果による事故削減の費用対効果は、より定量的に把握される段階にある。年間200件超の逆走事案のうち1割を防止できれば、人的・経済的被害の圧縮効果は大きい。事故時の警察・消防・医療の出動コストや物流遅延、被害者の医療費・補償費用など波及コストは膨大である。これらを体系的に見直すことで、予算配分の優先順位を明確化できる。
制度面の見直しも不可欠だ。高齢者向け運転技能検査や講習制度は整備されつつあるが、形式的な対応に留まる場合も多い。地域ごとの交通環境や車依存度を踏まえ、より精緻なリスク評価に基づく制度設計が求められる。特に地方部では公共交通の縮小で自家用車が唯一の移動手段となり、一律の運転制限や返納政策は生活インフラの破綻を招く恐れがある。
だからこそ、ハード面の投資とソフト面の制度運用を連携させ、事故予防の網を多層的に構築する必要がある。年間200件を超える逆走事故を減らすためには、管理者とドライバーの双方の行動変容が欠かせない。技術、財政、制度、地域性という制約を認識し、統合的に最適化するプロセスが不可欠である。