維持費7億円超! 廃線寸前だった「JR肥薩線」はなぜ復活できたのか? 9割を公費負担、それでも「乗りたい」と思わせる観光戦略とは
九州南部の豪雨災害から5年。235億円を要するJR肥薩線の復旧が正式決定した。通学路線・くま川鉄道とは異なる「観光回廊」としての再生。その経済的意味と制度設計、そして“使われる鉄道”への転換を問う。
国・県負担で復活の芽吹き

2025年3月31日、熊本県とJR九州は肥薩線(八代~人吉間)の鉄道復旧について最終合意した。肥薩線は、従来なら廃止が検討されるような状況から復活への道を選んだ。今後、どうやって持続させていくべきだろうか。
2020年7月の豪雨災害で、球磨川流域は壊滅的な被害を受けた。JR肥薩線の橋梁が流出し、線路は寸断された。くま川鉄道も同様に甚大な被害を受けた。
肥薩線は八代駅から人吉駅、隼人駅に続く全長124.2kmの路線だ。くま川鉄道は、旧国鉄湯前線を引き継ぐ第三セクター鉄道で、人吉温泉駅から湯前駅までを結ぶ24.8kmの路線だ。
両路線とも採算が厳しく、最近の地方鉄道の現状を考えると、復旧は難しいと見られていた。特に、JR九州は肥薩線の復旧費用を約235億円と見積もり、復旧に慎重な姿勢を示していた。
しかし、国土交通省、熊本県、JR九州が行った「JR肥薩線検討会議」での議論の結果、国による河川改修や道路復旧との連携で、費用を軽減する仕組みができた。2022年5月には、橋梁の再建や護岸のかさ上げなどが国の災害復旧事業として実施され、JR九州の負担は約76億円に圧縮された。さらに、国の補助制度を使い、実質的なJRの負担は半額の約38億円となる見込みだ。加えて、2023年11月には復旧費用の約9割を国と熊本県が負担する方針が決まり、復旧の目処が立った。
最終合意書では上下分離方式(鉄道の運行とインフラの管理・維持を分けて行う仕組み)の導入も決定された。試算によると、年間維持費用は約7億4000万円とされており、その大部分を熊本県が公費で負担する。沿線自治体の負担は最小限にとどめられる予定だ。