維持費7億円超! 廃線寸前だった「JR肥薩線」はなぜ復活できたのか? 9割を公費負担、それでも「乗りたい」と思わせる観光戦略とは

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九州南部の豪雨災害から5年。235億円を要するJR肥薩線の復旧が正式決定した。通学路線・くま川鉄道とは異なる「観光回廊」としての再生。その経済的意味と制度設計、そして“使われる鉄道”への転換を問う。

自動車依存の観光回復と鉄道再生

人吉駅の位置(画像:OpenStreetMap)
人吉駅の位置(画像:OpenStreetMap)

 肥薩線復旧後に大幅な観光客増が見込めるかどうかを検証するため、熊本県の観光統計を見てみよう。

 人吉・球磨地域の延べ観光入込客数は、2019年の180万6176人から2020年には111万5058人(38%減)となった。しかし、この年は新型コロナウイルスの感染拡大が始まった年であり、客足の減少がすべて水害によるものとはいえない。重要なのはその後の回復状況だ。2021年以降の観光客数は次のようになっている。

・2021年:102万0170人
・2022年:129万4481人
・2023年:159万2923人

これを見ると、観光客数は2019年に向けて順調に回復しているように見える。

 人吉は公共交通のアクセスが限られた地域だ。鉄道は被災で不通となり、都市間高速バスは人吉インターチェンジに停車するのみで、市街地までは路線バスに乗り換える必要がある。それにもかかわらず、観光客数が回復しているのは注目に値する。

 さらに、どの地域からどのように人吉・球磨地域に訪れているのかを調べた調査結果も参考になる。人吉球磨観光地域づくり協議会の「令和5年度人吉球磨観光実態調査結果報告書」を見てみよう。この調査では以下の結果が示されている。

●交通手段(旅行で出発地から人吉球磨へ訪れる際に利用した手段)
・自家用車:66%
・レンタカー:16%
・高速バス・路線バス:9%

観光客は主に自家用車で人吉・球磨地域に訪れており、このことが観光客数回復の要因となっている。そのため、復旧後の肥薩線利用者増加には、旅行者に

「肥薩線を利用するメリット」

を知らせる必要がある。今回の復興方針案では、2033年度の運行再開を目指し、肥薩線を中心に観光投資に97億円を投入し、観光客数を2019年比で37%増の246万人に拡大する目標が掲げられている。

 水害前の肥薩線には年間約8億円の経済波及効果があった。また、肥薩線は八代から鹿児島・宮崎へのルートであり、地域間広域観光の軸としての潜在力も指摘されている。さらに、鉄道がインバウンド客にとって利用しやすいとされ、外国人観光客の誘致も重要となるだろう。

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