維持費7億円超! 廃線寸前だった「JR肥薩線」はなぜ復活できたのか? 9割を公費負担、それでも「乗りたい」と思わせる観光戦略とは

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九州南部の豪雨災害から5年。235億円を要するJR肥薩線の復旧が正式決定した。通学路線・くま川鉄道とは異なる「観光回廊」としての再生。その経済的意味と制度設計、そして“使われる鉄道”への転換を問う。

通学路線としての生存戦略

くま川鉄道(画像:写真AC)
くま川鉄道(画像:写真AC)

 同じ被災地域で走るふたつの鉄道の復旧過程には、興味深い違いがある。くま川鉄道は、2020年8月に臨時取締役会で全線復旧の方針を決定し、2021年11月には一部区間で運行を再開した。全線復旧は2026年度上半期を目指して進められている。

 一方、肥薩線の復旧決定には時間がかかった。この違いには、両鉄道の地域での役割の違いが関係している。くま川鉄道は、沿線の高校への通学手段として欠かせない。住民の日常生活に直結した「生活路線」としての役割が強い。『令和5年(2023年)統計年鑑』には、くま川鉄道の利用状況が次のように記載されている。

●2021年度
・総数:45万2000人
・うち定期:41万1000人

利用者の9割以上が通勤や通学のために利用していることになる。この傾向は以前から続いている。比較のために、2018年度の状況も示す。

●2018年度
・総数:76万6000人
・うち定期:63万8000人

被災前でも定期利用は8割以上だった。くま川鉄道は、地域住民の日常生活に密着した生活路線として経営を維持してきた。

 さらに、定期利用者のほとんどは沿線の高校生である。これは、地域の道路事情が影響している。くま川鉄道沿線では幹線道路が限られ、球磨川を越える橋も少ない。そのため、朝夕のラッシュ時には渋滞が頻繁に発生する。高校生にとって、通学手段は鉄道以外に選択肢がない。地元の人に聞くと、

「高校時代に通学でしか乗らなかった」

という話が多い。高校卒業後は免許を取得して自動車に乗り換えることが一般的だ。

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