トヨタC-HR、なぜ7年で消えた?――「走りのSUV」に誰も振り向かなかった決定的理由! 「ニュルで鍛えた足回り」はどこへ行った?

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「ニュルで鍛えた足回り」という言葉がかつて自動車市場で強力な訴求力を持っていた。トヨタC-HRがその象徴となり、走行性能の価値が広く支持された。しかし、時代の変化とともに、走りの優位性は次第に消費者の関心を引きにくくなり、C-HRの失速がその証となった。

C-HRが映した価値観の転換点

C-HR(画像:トヨタ自動車)
C-HR(画像:トヨタ自動車)

 背景には、クルマの役割そのものの変化がある。1980~1990年代、クルマはステータスや個性の象徴だった。「いいクルマに乗る」ことが、社会的な評価と直結していた。走行性能や足回りの完成度は、その価値を支える中核に位置づけられていた。

 やがて時代が変わり、ステータス性は徐々に後退する。それでも2000年代以降しばらくは、走りのよさが説得力を持ち続けていた。トヨタC-HRが2010年代にヒットした背景にも、その価値観の残滓がある。

 しかし今、クルマは「欲しいもの」から

「必要なもの」

へと変化した。そうしたなかで、「ニュルで鍛えた足回り」という言葉は、一部の熱心な層を除けば意味を失いつつある。

 とはいえ、完全に過去の遺物になったわけではない。「ニュル仕込み」は今も開発現場で重要な意味を持つ。過酷な条件下で走行性能を磨く姿勢は、実際の安全性や乗り味の向上につながっている。そこには、メーカーの技術に対する真摯な姿勢がある。

 問題は、その価値がもはや一般ユーザーには届きにくくなっているという点だ。問われているのは、「走り」そのものではない。それをどう語るかである。「走りの言葉」は今、再定義のときを迎えている。

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