トヨタC-HR、なぜ7年で消えた?――「走りのSUV」に誰も振り向かなかった決定的理由! 「ニュルで鍛えた足回り」はどこへ行った?

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「ニュルで鍛えた足回り」という言葉がかつて自動車市場で強力な訴求力を持っていた。トヨタC-HRがその象徴となり、走行性能の価値が広く支持された。しかし、時代の変化とともに、走りの優位性は次第に消費者の関心を引きにくくなり、C-HRの失速がその証となった。

ブランドとしての「ニュル仕込み」

C-HR(画像:トヨタ自動車)
C-HR(画像:トヨタ自動車)

「ニュルで鍛えた足回り」は、かつてスポーツカーやプレミアムモデルだけに許された特別な表現だった。その背景にあるのが、ドイツ・ニュルブルクリンクのノルドシュライフェ(北コース)である。

 全長は約20.8km。コーナーは170を超え、高低差は約300mに及ぶ。

・荒れた舗装
・ブラインドコーナー
・激しいアップダウン

といった要素が複雑に絡み合う過酷なサーキットだ。世界中の自動車メーカーがここで走行テストを行い、「開発の聖地」として知られてきた。

 1周で一般道2000~3000km分の負荷がかかるともいわれるこのコースを走り込んだ車は、単なるカタログスペックでは語れない性能を備えている。そうした車両は“本物”として、クルマ好きを中心に高く評価されてきた。

「ニュル仕込み」と聞いて目を輝かせる層は、今も昔も変わらない。欧州ではBMWやポルシェ、メルセデスAMGが、ニュルでの開発をブランド戦略の核に据えてきた。日本でも、日産GT-RやホンダNSXなどがこの聖地での鍛錬を語ってきた。

 この言葉が意味するのは単なる性能の高さではない。鍛え抜いた車という開発思想そのものを象徴している。

 やがて、「ニュルで鍛えた足回り」は一般車にも使われるようになる。その象徴が、2016年に登場したトヨタC-HRである。

「TOYOTAの世界戦略SUV」

というキャッチコピーを掲げて登場したC-HRは、ニュルを含む世界各地で鍛えた足回りをアピールした。加えて、それまでのトヨタ車の印象を覆す斬新なデザインも話題となったコンパクトSUVだった。

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