トヨタC-HR、なぜ7年で消えた?――「走りのSUV」に誰も振り向かなかった決定的理由! 「ニュルで鍛えた足回り」はどこへ行った?

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「ニュルで鍛えた足回り」という言葉がかつて自動車市場で強力な訴求力を持っていた。トヨタC-HRがその象徴となり、走行性能の価値が広く支持された。しかし、時代の変化とともに、走りの優位性は次第に消費者の関心を引きにくくなり、C-HRの失速がその証となった。

訴求力を失った「走り神話」

C-HR(画像:トヨタ自動車)
C-HR(画像:トヨタ自動車)

 C-HRが「ニュルで鍛えた足回り」を前面に打ち出したのは、その言葉にまだ訴求力があった時代だった。走行性能の高さが、クルマ選びの大きな価値基準として機能していた時代である。

 しかし、クルマに求められる価値は変わっていく。走る楽しさから、日常での使いやすさへ。そうした移行のなかで、鍛えた走りを象徴する「ニュル仕込み」という言葉は、次第にユーザーの心に届かなくなっていった。

 C-HRの失速は、商品の限界だけでは語れない。走りの言葉そのものが持っていた力を、時代が手放し始めていた。その変化を象徴する事例だった。

 デザイン面でも、C-HRは終始異彩を放った。大胆で前衛的なスタイルは強烈な印象を残したが、同時に好みの分かれる存在でもあった。のちにトヨタが展開したSUVは、より均整の取れたデザインを志向。C-HRのような造形は、ブランド内でも例外的な存在となっていく。

 走りとデザイン。いずれも強い個性を宿していたがゆえに、C-HRは量産車の論理から徐々に外れていった。

「ニュルで鍛えた足回り」は、確かに当時は響いた。だが、それだけでは選ばれ続ける理由にはならなかった。走りのよさそのものが、ユーザーの選択において重要視されなくなりつつあった。C-HRが直面したのは、そうした価値観の変化そのものだった。

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