転生したら「環状八号線」だった件

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東京郊外を貫く環八――全長44km、完成までに約80年を要した“末っ子都道”は、今や1年で約47万人時間の渋滞損失を記録する都市交通の急所。生活環境への配慮と過密交通の狭間で、その存在意義が問われている。

環状インフラの末子の宿命

環八(画像:写真AC)
環八(画像:写真AC)

 吾輩は、東京郊外にある住宅エリアを貫いていることから、沿線住民の生活環境へ配慮が欠かせない。例えば、世田谷区(延長約12km)では、沿道整備道路に指定されており、

・沿線の住宅地への騒音を遮るために沿道の建物に最低高さ制限がある
・騒音が建物の後ろに抜けないために吹き抜けではなく壁が必要
・風営法の許可を必要とするホテルやゲームセンターなどの立地制限

などのルールが設けられている。住環境を守るために法令などによる制約で画一的にならざるを得ないのは、郊外を抜ける吾輩の宿命といっていいかもしれない。

 郊外の住宅地を通っているにもかかわらず、関越道(大泉IC)と東名高速(東京IC)を乗り継ぎしている交通の9割は、吾輩を利用しているという。これも一番外側の末っ子の宿命といえばそれまでであるが、渋滞の激しさゆえ、損失時間約47万人時間/年・km、全国平均の約18倍、環七の約2倍という不名誉な記録もある。

 沿線住民もドライバーも、吾輩のさらに外側を走る東京外かく環状道路を待ち望んでいるゆえんだ。東京外かく環状道路が生まれるまではストレスに耐え続けなければならないが、東京都道の環状ファミリーの一員として、重要な交通インフラという重責を果たしていきたい。

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