武蔵小杉はなぜ「タワマンだらけの街」になったのか? 住民激増、町内会解散…100年前からの歴史を辿る! 令和の都市開発は成功か失敗か
急成長する街、住民意識の不均衡

注目すべきは、これらの問題が2000年代初頭から既に危惧されていたという点である。
『日経アーキテクチャ』2006(平成18)年12月11日号は、川崎市が新旧住民の融和を目指して設立した「NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメント(現・一般社団法人武蔵小杉エリアマネジメント)」を報じている。大量の新住民流入によって変わりつつある街をどう一体化させるかは、タワーマンション建設初期からの重要課題だった。
『都市問題』2018年10月号に寄稿した同NPOの副理事長・山中佳彦氏は、行政の対応が後手に回っていると指摘し、
「堅牢なタワーマンションの個々の防災備蓄・装備をいかに充実させるかが肝要であり、そのような提案はエリマネの使命であると考えている」
と述べている。2019年には台風19号の浸水被害が発生。多くのタワーマンションが水に浸かり、街の脆弱性が明らかになった。この出来事で、危機管理のための地域コミュニティーの必要性が認識されたかと思われたが、実際には進展しなかった。
『東京新聞』2024年12月29日付電子版は、「武蔵小杉タワマン街で町会が解散へ 20年間で人口2.5倍なのに… タワマン住民向け別組織も人がいない…」と、厳しい現状を報じている。
「エリマネの運営も厳しい。当初はマンション全戸から月300円を徴収していたが、住民の不満が根強く、任意加入へと変更。会員数は5000人から500人に激減した。その後も減少に歯止めがかからず、現在は約70人。役員の一人は『エリマネも存亡の危機にある』と訴える」
このことをどう捉えるべきだろうか。災害を経ても、武蔵小杉には立派な建物や施設を利用する消費者は多い。しかし、地域の発展や課題に主体的に関わり、長期的視点で街づくりに参画する「住民」が育っていないという実態がある。