キッチンカーはなぜ「すぐ潰れる」のか? 料理が「見本と全然違う」のクレームも! 一期一会の裏に潜む経営難、移動飲食ビジネスの光と影とは

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キッチンカー業界は、顧客ロイヤリティプログラムや新たな営業エリアの開拓で成長を加速。季節限定商品やオンライン予約、デリバリーなどで差別化を図り、安定した集客を目指す事業者が増加中。

それでも経営が厳しい理由

キッチンカー(画像:写真AC)
キッチンカー(画像:写真AC)

 キッチンカーの経営は簡単ではなく、開業から

「1年以内に撤退する事業者が半数以上にのぼる」

という現実がある。その理由は多岐にわたる。

 まず、キッチンカーの営業で最も重要なのは「場所」の確保だ。しかし、人気の出店場所は限られており、初心者が有利なエリアを確保することは非常に難しい。多くの場所では実績のあるキッチンカーが優先されるため、新規参入者は売上が見込めないエリアや単発イベントに頼らざるを得ない。

 設備投資や固定費の負担も経営を圧迫する。キッチンカーは店舗型の飲食店に比べて初期投資が少なく済むが、それでも車両の購入や改装、許認可の取得には数百万円の費用がかかる。また、リースで開業する場合は毎月のリース料が固定費としてのしかかる。加えて、ガソリン代や発電機の燃料費、食材費といったランニングコストが存在し、売上が安定しない状況ではこれらが大きな負担となる。

 天候や季節による売上の変動も問題だ。屋外で営業するキッチンカーは天候の影響を強く受けるため、雨の日や極端に暑い日、寒い日には客足が減り、売上が激減することがある。さらに、オフィス街で営業する場合、平日のランチタイムに依存しがちで、休日には売上が見込めないことも多い。

 労働環境も厳しい。キッチンカーの運営は、朝早くから仕込みを行い、営業後には片付けと車両の移動が必要だ。通常、ひとりまたは少人数での運営となり、長時間労働が避けられず、体力的な負担が大きい。

 価格競争と利益率の低さも問題となる。Mellow(東京都港区)のデータによると、2023年10月のキッチンカー弁当の平均価格は851円から2024年10月には881円に約3.5%上昇した。しかし、多くのキッチンカー事業者は原材料費の上昇にもかかわらず、急激な値上げを避ける傾向がある。

 その一方で、1200円以上の価格設定でも高品質な食材や独自の調理法を提供する店舗が人気を集めている。人気店では手頃な価格帯から高価格帯まで多様なメニューを提供し、行列ができることが多い。中には毎月1万食を提供する店舗もあり、その人気は衰えることがない。ただ、人気の出店場所では売上の10~15%を場所代として支払う必要があり、利益率は圧迫される。

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