駅前再開発で消える「札幌の記憶」――文学が記録した風景はなぜ貴重なのか? 新幹線と都市再編の光と影とは【連載】移動と文化の交差点(11)

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札幌の急成長とともに変わりゆく街並みは、文学作品に色濃く刻まれている。都市の発展により失われた風景をデジタル技術で再現し、観光資源として再生する試みが注目されている。過去と未来を繋ぐこのアプローチは、次世代への新たな価値を創出する可能性を秘めている。

記憶の継承と観光資源化

札幌の街並み(画像:写真AC)
札幌の街並み(画像:写真AC)

 経済成長を目指すには都市の発展が避けられない。しかし、失われた風景が多い現実のなかでも、記憶を継承する方法は存在する。例えば、文学作品やその他のコンテンツを活用し、デジタルアーカイブやAR技術を使って、かつての札幌の風景をバーチャルで再現する試みも考えられる。都市が変わっても、人々の心に残る風景をどのように保存し、新たな観光資源として活用するかは重要な課題だ。

 都市は変わり続ける。西5丁目陸橋のように、その度に消えていく風景もある。しかし、振り返ると、筆者と札幌の街を繋げるものは記憶に過ぎない。札幌に限らず、日本中の都市がそれぞれ成長戦略を描いているだろう。しかし、人々の心には懐かしい風景が今も残っているはずだ。これは感傷と呼ばれるものかもしれない。時の流れを止めることはできない。

 だが、その変化を単なる喪失として捉えるのではなく、工夫を凝らして新たな観光資源として活用することで、都市の記憶を未来へとつなげることができる。過去の風景を文学を通じて追体験し、それを観光資源として活用することは、都市の持続的な成長と文化の継承を両立させる道になるだろう。

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