日産買収ではなく、ホンハイ「協業」の真意とは? 蜜月か支配か? 台湾企業の野望とEV戦略、政治リスクを読み解く

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ホンハイ精密工業の劉揚偉会長が「日産株の取得は目指していない」と述べた一方で、協業の深化を明言。EV市場で競争力を失いつつある日産にとって、ホンハイとの連携は必要不可欠な選択肢となっている。しかし、この協業が単なる技術提携にとどまらず、ホンハイが主導権を握る可能性もある。

鴻海「株取得は目指していない」

日産自動車のロゴマーク。2022年1月14日撮影(画像:時事)
日産自動車のロゴマーク。2022年1月14日撮影(画像:時事)

 台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の劉揚偉会長は、日産の「株取得は目指していない。協業だ」と明言した。2月12日付けのロイターが報じた。さらに、日産の大株主であるフランスのルノーとも協業について協議しているという。

 この発言を

「額面通り」

に受け取るべきなのか、それとも別の意図があるのか。日産の現状とホンハイの戦略を分析し、「協業」という言葉の真の意味を探る。

協業」が意味するもの

 ホンハイは世界最大の電子機器受託製造企業(EMS)として知られ、iPhoneの製造を通じてアップルと密接な関係を築いてきた。

 しかし近年は電気自動車(EV)市場への進出を加速させ、自社開発のEVプラットフォーム「MIH」を推進している。同社が自動車産業において単なる下請けにとどまらず、より深く関与しようとしていることは明白だ。

 一方、日産はEV戦略で先行していたものの、近年の市場競争力は低下している。EV「リーフ」は先駆的な存在だったが、テスラや中国メーカーの台頭により、その優位性は失われつつある。こうした状況下で、ホンハイとの協業が浮上している。

 ここで重要なのは、協業が「何を意味するのか」という点だ。

 一般的に協業は対等な関係での技術開発や生産の共同推進を指す。しかし、ホンハイの過去の事業戦略を踏まえれば、この協業は単なる提携にとどまらない可能性が高い。

 アップルとの関係では、当初は製造請負にすぎなかったが、現在では設計や開発にも深く関与している。つまり、ホンハイにとって協業とは

「市場支配の布石」

であり、やがて主導権を握るための戦略的な第一歩となる可能性を否定できない。

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