日産買収ではなく、ホンハイ「協業」の真意とは? 蜜月か支配か? 台湾企業の野望とEV戦略、政治リスクを読み解く

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ホンハイ精密工業の劉揚偉会長が「日産株の取得は目指していない」と述べた一方で、協業の深化を明言。EV市場で競争力を失いつつある日産にとって、ホンハイとの連携は必要不可欠な選択肢となっている。しかし、この協業が単なる技術提携にとどまらず、ホンハイが主導権を握る可能性もある。

日産の成長戦略、三つの選択肢

 日産にとって現状は決して楽観視できる状況ではない。ホンダとの統合協議が白紙に戻り、ルノーとの関係も依然として不透明ななかで、新たな成長戦略を模索しなければならない。日産が単独でEV競争を勝ち抜くのは容易ではなく、技術力と生産力を持つパートナーとの協力が不可欠だ。

 日産にとっての選択肢は、大きく分けて三つに絞られる。

 まずひとつめは、ホンハイとの協業を深化させることだ。ホンハイの製造技術を活用することで、EV開発・生産の効率化を狙う。ただし、長期的にはホンハイの影響力拡大を警戒する必要がある。

 ふたつめは、ホンダとの再交渉である。ホンダとの統合協議が白紙になったとはいえ、国内メーカー同士の協力にはシナジーがある。しかし、日産の経営陣の姿勢が変わらなければ、ホンダ側が再交渉に応じる可能性は低い。

 三つめは、米テック企業との提携である。グーグルなどのIT企業と提携し、ソフトウェア主導のEV開発を進める。ただし、これには相応の投資が必要であり、短期的には負担が大きい。

 これらの選択肢のなかで、最も現実的なのはホンハイとの協業深化だ。しかし、単なる技術提携にとどまらず、ホンハイが最終的に経営権を握る可能性を日産がどこまで織り込んでいるかが重要なポイントとなる。

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