率直に問う! 北陸本線特急、敦賀以東「直通復活」は可能か? JR西社長・大阪~和倉温泉間運行検討発言から考える

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大阪から東海道線経由で和倉温泉などへの直通特急再導入に向けて、JR西日本と第三セクター間の調整が鍵となる。競争激化と収益減少の中、観光振興を軸にした戦略的な再生案が求められる。

地域振興と鉄道の役割

和倉温泉駅には特急サンダーバードへの感謝を示すポスターが貼られていた。2024年3月31日撮影(画像:大塚良治)
和倉温泉駅には特急サンダーバードへの感謝を示すポスターが貼られていた。2024年3月31日撮影(画像:大塚良治)

 敦賀駅での乗り換えによる「分断」は、関西からの観光客を多く受け入れてきた地域にとって頭の痛い問題となっている。

 MRO北陸放送の報道によると、敦賀での乗り換えが原因で、加賀温泉郷へ向かう関西や中京からの観光客が減少しているという(「敦賀乗り換えで関西や中京からの観光客が減少」加賀温泉郷の旅館業者の切実な声 北陸新幹線敦賀以西の整備を考える勉強会」2025年2月5日付け)。鉄道は地域の維持・発展に重要な役割を果たしており、鉄道事業者の都合を優先しすぎると、地域振興に悪影響を与え、結果的に鉄道利用を減らすことにつながりかねない。

 JR西日本のパーパスである「私たちの志」は、「人、まち、社会のつながりを進化させ、 心を動かす。未来を動かす。」としている。そのなかには次のように書かれている。

「私たちは、 これからも安全、安心を追求し、高め続けます。 人と人、人とまち、人と社会を、リアルとデジタルの場でつなぎ、 西日本を起点に地域の課題を解決します。 そして、持続可能で活力ある未来を創り、その先の一人ひとりが思い描く暮らしを 様々なパートナーと共に実現していきます」(JR西日本グループ 統合レポート2024)

 敦賀駅での乗り換えによる「分断」は、「人と人、人とまち、人と社会を、リアルとデジタルの場でつな」ぐことを志向するJR西日本の理念に反しているといわざるを得ない。

 敦賀以東への定期特急の直通運転復活は、北陸の地域振興に貢献し、JR西日本のパーパスである「地域の課題を解決」することにも繋がる。何より、利用者(顧客)には乗り換えなしのシームレスなサービスを提供できるようになる。

 また、地域はJR西日本の自助努力を待つのではなく、敦賀以東への定期特急の直通運転復活に要する経費を進んで負担することが、観光客誘致のための前向きな

「投資」

であるという認識を共有するべきだろう。ステークホルダーによる負担の分かち合いが、北陸地方と鉄道網の新たな地平を開くはずだ。

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