率直に問う! 北陸本線特急、敦賀以東「直通復活」は可能か? JR西社長・大阪~和倉温泉間運行検討発言から考える

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大阪から東海道線経由で和倉温泉などへの直通特急再導入に向けて、JR西日本と第三セクター間の調整が鍵となる。競争激化と収益減少の中、観光振興を軸にした戦略的な再生案が求められる。

旅客列車増加による収入減

米原駅に停車中のしらさぎ1号富山行き。2009年12月12日撮影(画像:大塚良治)
米原駅に停車中のしらさぎ1号富山行き。2009年12月12日撮影(画像:大塚良治)

 JR在来線特急の敦賀以東への定期特急直通運転を復活させる上での障害となる要因として、次の3点が挙げられる。

1.北陸新幹線の利用減少の可能性
2.旅客列車の割合増加による並在事業者の線路使用料収入減
3.並在事業者との調整の必要性

「1」については、北陸新幹線が開業し、JRが経営分離を決定した北陸本線の一部区間が並在事業者に移管されたことで、JRと並在事業者は競合関係にある。JRが敦賀以東で並在事業者に特急を直通運転させると、新幹線の利用が減少する可能性がある。

「2」については、国土交通省鉄道局によると、JR貨物から並在事業者に支払われる線路使用料は、貨物列車と旅客列車の走行実績に基づいて決まるため、旅客列車の割合が増えると、並在事業者が受け取る線路使用料収入は減少する。そのため、並在事業者は線路使用料収入の減少を補えるだけの旅客収入が見込めない限り、特急列車を運行・増発するメリットはない。IRいしかわ鉄道は

「当社線を経由する特急は、石川県からの要望で運行を継続している。特急の運行により旅客列車の割合が高まるため、その分JR貨物から受け取る線路使用料収入は減る。運賃と特急料金は入ってくるが、線路使用料の減収分には足りていない」

と現状を説明している。

「3」については、JR西日本が並在事業者に特急運行の協力を求める場合、JR西日本は線路使用料収入減に対する補償やダイヤ編成の調整を行う必要があるかもしれない。JR西日本にとっては、特急の敦賀折り返しを続ける方が、新幹線利用の促進や並在事業者との調整回避の面で有利となる。

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