城と遺跡は、なぜ60代以上の「一人旅」で人気なのか? 実に「52%」が積極支持、自己探求? 知的好奇心? それとも… 欲望と社会変化を考える
JTBパブリッシングの調査によれば、60代以上の51.7%が城や遺跡を訪れることを好む。社会基盤の進化と個人旅行の進展が背景にあり、歴史散策は自己探求や知的充足感を求める年配者に新たな視点を提供している。
インフラ革新とシニアの個人旅行増加

年配者が城や遺跡を訪れる傾向が強まった背景には、社会の変化が影響している。戦後の日本は高度経済成長期を経て、経済的な豊かさを追求する時代が続いた。しかし、バブル崩壊後、「物質的な豊かさ」よりも
「精神的な満足」
が重視されるようになり、特に定年後の世代にその傾向が強く現れている。
また、旅行の選択肢の多様化も影響を与えている。かつて旅行といえば団体ツアーが主流だったが、近年ではインターネットを活用し、個人で旅を計画することが容易になった。年配者でもスマートフォンを活用し、交通手段や宿泊施設を自ら手配できるようになり、ひとり旅のハードルが大きく下がった。
さらに、歴史観光の「観光資源」としての価値が高まりつつある。全国の自治体は観光振興のために城郭や遺跡の整備を進め、VR技術などを取り入れた新たな展示方法を導入している。この取り組みにより、歴史に詳しくない人でも楽しめる環境が整いつつある。
交通インフラの進化も見逃せない要素だ。鉄道やバスの利便性が向上し、新幹線の延伸や格安航空会社(LCC)の普及により、遠方の歴史的スポットへのアクセスが短期間で可能となった。そのため、都市部に住む年配者が週末を利用して気軽に城や遺跡を訪れることができるようになった。
シニア向けの旅行サービスの充実も影響を与えている。例えば、JRの「大人の休日倶楽部」は、60代以上の旅行需要を喚起する施策として成功を収めており、鉄道だけでなく観光バスの「周遊ルート」も増加している。このように、個人旅行における移動の選択肢が広がり、年配者の旅行スタイルに変化をもたらしている。