城と遺跡は、なぜ60代以上の「一人旅」で人気なのか? 実に「52%」が積極支持、自己探求? 知的好奇心? それとも… 欲望と社会変化を考える

キーワード :
,
JTBパブリッシングの調査によれば、60代以上の51.7%が城や遺跡を訪れることを好む。社会基盤の進化と個人旅行の進展が背景にあり、歴史散策は自己探求や知的充足感を求める年配者に新たな視点を提供している。

城や遺跡を訪れる理由

松山城からの眺め(画像:写真AC)
松山城からの眺め(画像:写真AC)

 年齢を重ねた人々が城や遺跡を訪れる理由には、まず

「自己のルーツを探る欲求」

が挙げられる。人生の後半に差し掛かると、自分の生まれ育った地域や日本の歴史に向き合う時間が増え、過去を振り返ることが重要な意味を持つようになる。特に戦後世代にとって、幼少期に学んだ歴史を現代の視点で再評価することは、単なる趣味にとどまらず、知的探求としての意義を持つ。

 また、城や遺跡は「時間の蓄積」を象徴する存在でもある。若い頃は効率や未来を重視しがちだが、年齢を重ねることで

「長い時間を生き抜いたもの」

に価値を見出すようになる。遺跡や城郭の石垣に触れることで、歴史の流れと自分の人生の連続性を感じることができ、時の流れの中で自分の位置を再認識する心理が働くと考えられる。

 さらに、城や遺跡を巡る旅は知識を深めることで

「精神的な充足感」

を得る側面を持つ。老後は社会的な役割が減少し、知的刺激を受ける機会が少なくなるが、歴史的遺産に触れることで学びを深め、知的好奇心を満たすことができる。

 年配者の多くは、配偶者や家族と過ごす時間よりも「自分自身と向き合う時間」を求める傾向がある。特に退職後は「集団の中での役割」から解放されるため、独自の時間を大切にする人が増えている。

 さらに、歴史散策は

「他人と感覚を共有しにくい旅」

でもある。温泉旅やグルメ旅は他者と楽しむことができるが、歴史の魅力は個々人の知識や興味に依存する。そのため、年配者にとっては自分のペースで史跡を巡り、解釈し、感じる時間が贅沢な体験となる。

全てのコメントを見る