「地方暮らしはクルマがないと無理」は単なる甘え? 本当? いまや75歳以上の高齢者「約2割」時代…地方の交通インフラ崩壊の危機とは
クルマ依存脱却への道筋と実績

都市インフラ整備においては、自動車道路の建設が最優先され、歩行者や自転車利用者のための空間整備は後回しにされてきた。このように確立された都市構造は、一度形成されると変更が極めて難しい。既存の建物や道路網を改修するには莫大な費用がかかり、土地利用の変更には地権者をはじめとする利害関係者との調整が必要となるため、都市の構造を変えることは容易ではない。
さらに、長年にわたりクルマ中心で形成されてきた都市では、住民の生活様式や行動パターンがクルマ利用を前提としたものに固定化している。物理的な都市構造を変更できたとしても、人々の行動様式を変えるのは簡単ではない。この結果、クルマに依存しない生活を望む人々にとっても、現実的には極めて困難な状況が続いている。特に高齢者や障害者、経済的な理由でクルマを所有できない人々にとって、現在の都市構造は移動の自由を著しく制限している。
都市構造の改革は、インフラ整備や土地利用計画の変更、人口移動など多岐にわたる要素を含む大規模なプロジェクトであり、計画から実現には膨大な時間が必要だ。しかし、急速に進行する高齢化には時間的余裕がない。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年には高齢化率が35%を超え、3人にひとり以上が65歳以上となる。これはクルマ依存型の都市構造に対して重大な課題を突きつける。特に、医療施設や商業施設の再配置は喫緊の課題だ。クルマの運転が困難になる高齢者が増加する中、地方都市では、高齢者が無理なく通院や買い物をできる施設配置の見直しが求められている。
注目すべき取り組みとして、富山市の事例がある。同市では2007(平成19)年以降、「お団子と串」と呼ばれる都市構造への転換を進めている。これは、路面電車やバスなどの公共交通を「串」に見立て、その沿線に病院や商業施設などの都市機能を「お団子」のように集約する構想だ。この取り組みは、クルマに頼らず生活できる都市づくりを目指した先進的な取り組みとして、全国的に注目を集めている。