「地方暮らしはクルマがないと無理」は単なる甘え? 本当? いまや75歳以上の高齢者「約2割」時代…地方の交通インフラ崩壊の危機とは

キーワード :
,
地方での生活におけるクルマの不可欠さが再認識されている。高齢化が進むなか、公共交通では代替できない実情が浮き彫りに。福岡や秋田の事例をもとに、クルマ依存が進む現状とそれが生む課題を検証する。

郊外移住の現実、問われる交通インフラ

 福岡県北部の福津市は、2005(平成17)年に旧福間町と旧津屋崎町が合併して誕生した。福間駅から博多駅までは快速で25分、特急なら15分という好立地にあり、福岡市のベッドタウンとして発展を続けている。人口も増加傾向にあり、2017年1月末の6万1773人から、2024年12月末には6万9186人へと着実に伸びている。取材を通じて住民の声を聞くと、多くが「住みやすい」と口にするものの、その言葉には決まって「クルマがあれば」という前提が付く。

 福間駅周辺ではマンション建設が進み、一定の商業施設も集積している。しかし、市内で最も賑わうのは、駅から循環バスで約8分の距離にあるイオンモール福津だ。その他の商業施設も、イオンモールが立地する国道3号線沿いや、県道97号線沿いに集中している。福間駅を中心に路線バスが運行されているものの、その利便性はクルマには遠く及ばない。

 同様の状況は、福岡県内の他の都市にも見られる。例えば糸島市は、福岡市内から電車で40分足らずとアクセスが良く、風光明媚な環境も相まって首都圏からの移住者も多い人気エリアだ。しかし、ここでも日常生活にはクルマが欠かせない。

 糸島市には「JA糸島産直市場 伊都菜彩」という人気の市場があるが、訪れる際に最寄りのJR筑肥線・波多江駅から歩いて向かう人はほとんどいない。実際、取材時に徒歩でアクセスしていたのは筆者だけだった。

 深刻なのは、県庁所在地のような地域の中核でさえ、クルマ依存が常態化していることだ。例えば秋田県秋田市では、中心部ですら歩行者の姿が少なく、市民の移動手段はほとんどクルマに限られる。駅から少し離れた場所へ向かう場合、運行頻度の低い路線バスを待つ必要があり、日常の足として利用するには心もとない。この時の目的地は秋田大学だったが、結局、歩いたほうが早かった。

全てのコメントを見る