「地方暮らしはクルマがないと無理」は単なる甘え? 本当? いまや75歳以上の高齢者「約2割」時代…地方の交通インフラ崩壊の危機とは
郊外商業施設の集中が招く生活難

食料品アクセス困難人口の増加は、主にふたつの要因によって引き起こされている。ひとつめは、地方都市の中心部における商店街の衰退だ。かつて地域の買い物の中心だった商店街は、大型店の郊外移転や新規進出によって客足が遠のき、次々とシャッターを下ろしている。この結果、中心市街地に住む高齢者は、日常の買い物に困難を抱えるようになっている。
ふたつめは、ニュータウンでの商業機能の喪失だ。かつてはニュータウン内にスーパーマーケットを中心とした商業施設が存在し、地域住民にとって便利な買い物環境を提供していた。しかし、クルマでアクセスできるロードサイドの大規模小売店舗に客足を奪われ、これらの店舗は次々と閉店している。その結果、高齢化が進むニュータウンでは住民が買物難民になるという深刻な状況が生まれている。
このように、郊外型の大型商業施設への一極集中は、クルマを自由に使える人々にとっては利便性を高める一方で、使えない高齢者などの生活基盤を脆弱にしている。
この現状は深刻なジレンマを引き起こしている。運転に不安を抱える高齢者であっても、クルマを手放すことができない状況だ。近年、高齢ドライバーによる痛ましい交通死亡事故のニュースが増えているが、免許の自主返納は思うように進んでいない。警察庁の統計によれば、免許返納数は1998(平成10)年に2596件から、2019年には
「60万1022件」
とピークを迎えた。しかし、その後は減少傾向にあり、2023年には38万2957件にまで落ち込んでいる。
『産経新聞』電子版は、この減少傾向の背景として、コロナ禍による高齢者の外出機会の減少が返納の動機づけを弱めたことを指摘している。しかし、もっと本質的な問題は、多くの高齢者が生活のために運転を続けざるを得ない現実にある。つまり、危険を認識しながらも生活を維持するために免許を手放せないという切実な状況が浮かび上がっている。