宇都宮LRT、2024年も大ヒットのワケ! 累計乗客数ついに「600万人」突破、成功要因を今さらながら徹底解剖する

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2023年8月に開業した栃木県の宇都宮ライトレールは、わずか1年で黒字化を達成した。初年度の純損益は約5700万円の黒字となり、地方鉄道の常識を覆す結果となった。この路線は新型車両と全ドア乗降システムを採用し、定時運行率の高さや利便性が評価されている。利用者数は開業当初の予想を大きく上回り、沿線地域では地価上昇や開発の活性化といった経済効果も生まれている。地域活性化のモデルケースとして注目されている。

LRT効果で地価上昇、活性化進展

宇都宮LRTの開通に合わせて「新たな街」が生まれた宇都宮駅東口・宮みらいエリア。右手前から奥に曲がる線路がLRTだ。かつては「駅裏」だったが新たに商業施設やホテルなどが完成、拠点性が大幅に増した。筆者撮影(画像:若杉優貴)
宇都宮LRTの開通に合わせて「新たな街」が生まれた宇都宮駅東口・宮みらいエリア。右手前から奥に曲がる線路がLRTだ。かつては「駅裏」だったが新たに商業施設やホテルなどが完成、拠点性が大幅に増した。筆者撮影(画像:若杉優貴)

 宇都宮LRTの最も注目すべき点は、その定着度と沿線への波及効果だ。

 宇都宮LRTは2024年8月25日に開業1周年を迎え、累計利用者数が475万人を超えた。9月には500万人、11月19日には

「600万人」

に達した。また、2024年4月の進学や就職シーズンを迎え、マイカーやバスから電車への通勤・通学への切り替えが多く見られた。

 さらに、休日にはLRTを利用してレジャーや買い物に出かける人も増え、地元メディアによれば、沿線の商業施設では実際に来店客数や売上が増加したところもあるほか、沿線での開発が活発になり、それにともなって地価の上昇も見られるようになった。

 例えば、2024年現在、LRT沿線の人口は事業化がほぼ決まった2012年に比べて約8%(約5000人)増加している。また、国土交通省が2024年3月に発表した公示地価や、栃木県が9月に発表した基準地価(7月1日時点)によると、LRT沿線の商業地や住宅地の地価は上昇しており、商業地では2013年以降、平均で約6%、住宅地では平均で約11%も上昇している。特に、宇都宮市の地価最高額地点は、以前はJR宇都宮駅西側や東武宇都宮駅周辺の商店街エリアだったが、2020年以降はLRTの発着点(宇都宮駅東口電停)である宇都宮駅東口・宮みらいエリアに変わった。このような地価の上昇や開発の進展は、自治体の税収増加にも寄与していると考えられる。

 宇都宮LRTは、今後車両の増備を進めるとともに、2030年代にはJR宇都宮駅西側の中心商店街や東武宇都宮駅方面へ路線を延伸する計画がある。また、東武宇都宮線への直通乗り入れも検討されており、実現すれば大きな影響を与えるだろう。このエリアはかつて宇都宮市の地価最高額地点だったが、近年は大型店や老舗が相次いで閉店している。そんなナカで、LRTの沿線活性化が延伸地域にも波及することが期待されている。

 すでに宇都宮の街には欠かせない存在となったLRT。ぜひ一度乗車して、その凄さを実感してみてほしい。

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