「階段では手すりを持って」担当者が社員を監視、ある自動車メーカーが“過保護すぎる規則”を設けるワケ
「階段では必ず手すりを持って」。とある自動車メーカーで言われたひと言に、思わず驚いた筆者。この一件から見えてくる“現場の葛藤”をリポートする。
過保護な細やかさは公正さの証
実はこのような話は、決してめずらしい話ではない。
ある自動車関係エンジニアは言う。
「カッターの使用が禁止されているため、取引先から受け取った荷物を開けるのが大変だ」
また他の重工関係技術者もこう話す。
「社内にある池への立ち入りが禁止された」
日本の技術を引っ張る大企業が、まるで子供を相手にしているかのような規則を次々と社員に課しているのである。
なぜこのようなことが起こるかというと、実はすべて労働災害防止のために行われているのだ。
労働災害(労災)とは仕事に関連した作業が原因で発生したケガや病気、死亡などを意味する。
労災は全て、労働監督基準署に必ず報告されなければいけない。そして会社は、必要な治療費などを保障しなければいけない。
つまり、会議室を移動するために歩いていた階段で転んで足首をねんざしたのも、事務所でダンボールを開けるために使ったカッターで手を切ったのも、さらには休憩中に散歩がてら社内の池の飛び石を渡っていたら転んで頭を打ったのも、全て労働災害となり、報告の義務が発生するのだ。