日本では激レア 機関車の「プッシュプル運転」が、欧州では現役バリバリ時速250kmで走行してるワケ

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機関車が牽引する客車や貨車は、終点に到着後、機回し設備がなければ最後尾の機関車が車両を押す「推進運転(プッシュプル運転)」が行われる。日本ではほとんど見なくなったこのスタイルだが、欧州では今も現役バリバリ。どころか日本の“10倍”の速度で走っている。その理由を歴史的背景から探る。

日本では法令で時速25km以下

動力集中方式を採用し、片側は動力のない制御客車を連結したICE2型。広義で言えば、これもプッシュプル運転の仲間だ(画像:橋爪智之)。
動力集中方式を採用し、片側は動力のない制御客車を連結したICE2型。広義で言えば、これもプッシュプル運転の仲間だ(画像:橋爪智之)。

 機関車が牽引(けんいん)する客車や貨車は、通常の運転では機関車を先頭として運転される。そのため、終点に到着したら機関車を反対側につなげ換える「機回し」が必要だ。しかし、終点に機関車をつなげ換えるための設備や、それを設けるための十分なスペースがない場合もある。その場合、機関車を最後尾として客車や貨車を押す、いわゆる「推進運転」が必要となる。

 日本は嵯峨野観光鉄道(京都市)やJR北海道のノロッコ号、JR西日本の奥出雲おろち号(島根県~広島県)など、わずかではあるが推進運転が行われている路線や列車がある。またかつては、東京・上野を発着する寝台特急が上野駅と車庫のある尾久の間を回送する際、やはり推進運転が行われていた。

 とはいえ、日本では推進運転というものはあまり一般的ではない。比較的早い段階で電車やディーゼルカーが普及したことで、現在では客車列車そのものをほとんど見かけなくなったことが最大の理由だが、推進運転をする場合も運転士は機関車に乗車して運転するため、安全上の理由により法令で最高速度25Km/h以下と定められている。

 運転本数が少ないローカル線で観光列車として運行するならさておき、通常の営業運転で25Km/h以下というのは現実的ではない。また技術的な側面で見ると、日本で一般的に使用されている自動連結器は、力が1点に集中して破損する危険性があるため、特に後部から機関車が押すには適していないとされる。

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