荷物が届かない、自宅に食料がない! 日本人は「本当の物流危機」を経験すべき――物流ジャーナリストの私がそう考えるワケ

キーワード :
2024年問題って実は大したことなかったんじゃないの?――。そんな楽観論が広がり始めている。この国は一度本当の物流クライシスを経験しないと、物流の重要性が分からないのかもしれない。

リンゴ輸送危機の真相

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 2024年3月、「リンゴが運べず、ミカンに負ける」という言葉が話題になった。発言したのは青森県知事だ。4月1日から、トラックドライバーの労務管理基準を定めた改善基準告示が改正され、ドライバーの1日の拘束時間が最大16時間から15時間に短縮された。

 宮下宗一郎青森県知事は、この改正によって青森県の特産品であるリンゴを東京まで輸送する時間が、従来の1日から2日に延びてしまい、競合するミカンなどの果実に対する競争力が失われると訴えた。

 しかし、この発言には明らかに矛盾がある。知事は

「運転時間そのものが9~10時間かかり、法定の休息時間に荷受け、荷下ろしなどの時間もあります」

と説明している。つまり、リンゴの積み卸しに数時間(発言から推測すると最低でも5時間)がかかるといっているのだ。

 一方で、政府が進める物流革新政策では、貨物の積み卸し(荷役)や待機時間を1運行あたり2時間以内に抑えることが推奨されている。この背景を踏まえると、知事の発言は

「青森県のリンゴ農家を守るために、ドライバーが犠牲になってほしい」

といっているようにも聞こえる。

全てのコメントを見る