運送会社の逆襲が始まった! 取引解消で荷主あたふた、「代わりの会社が1か月も見つからない」という今さら現実だ
荷主との取引解消を選択する運送会社
「会社とトラックドライバーを守るためには、今まで取引のあった荷主であっても、取引関係を解消する覚悟が必要です」
車両台数60台ほど、中堅運送会社である八大(東京都中央区)の代表取締役 岩田享也氏は、ため息をつく。
岩田氏は数年前から「物流の2024年問題(以下、2024年問題)」を見据え、コンプライアンス違反の運行などを強いてくる荷主との取引を見直してきた。
筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)が先日、当媒体に寄稿した「いつまで荷主にナメられるのか――もはや爆発寸前、中小『運送会社』の“積年の恨み”の正体」(2024年8月3日配信)でも触れたとおり、かつて荷主にとって、運送会社は、
「すげ替えの利く存在」
だった。例えば
・手積み手卸し
・配送先の店舗における商品の棚入れ
・積み卸し先での、フォークリフトを使ったドライバーによる自主荷役
積み卸し先の都合で、何時間も待たされることも多々ある。こうした荷主からの過剰要求に対し、運送会社が改善を求めようものならば、
「ウチの取引に文句があるの? だったらいいよ、辞めてもらって。だって、運送会社は世の中にたくさんあるんだから」
といわれ、一方的に取引を切られてしまうのが、これまでの運送会社であった。1990年代に行われた物流2法改正による規制緩和によって、運送会社の数が1.5倍まで増加し、運送会社間の過当競争が起きてしまった結果である。
運送会社は、荷主から取引を切られることを恐れ、
・運賃の安い仕事
・長時間労働やドライバーの身体に負荷の掛かる仕事
であっても、断る勇気を持てなかった。会社と、そして何よりもドライバーを始めとする
「従業員の雇用」
を守るためには、泥水をすする覚悟も必要だったのである。だが2024年問題によるドライバーにおける残業の上限規制や、コンプライアンスの強化(改善基準告示の改定)が2024年4月1日より実施された。
「荷主にいわれるがままにブラックな経営を続けていれば、今度はウチ(運送会社側)が罰せられる……」
健全な考え方を持つ運送会社経営者は、取引解消を覚悟して、荷主に改善を要求し始めたのだ。