荷物が届かない、自宅に食料がない! 日本人は「本当の物流危機」を経験すべき――物流ジャーナリストの私がそう考えるワケ
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2024年問題って実は大したことなかったんじゃないの?――。そんな楽観論が広がり始めている。この国は一度本当の物流クライシスを経験しないと、物流の重要性が分からないのかもしれない。
自己犠牲で追い込まれる運送業界の現実

同じ問題は冷凍食品輸送でも起きている――。
実はあまり知られていないが、国内最大の消費地である東京では冷凍倉庫が不足している。このため、地方、特に東北の冷凍倉庫に保管し、需要に応じて関東へ輸送する仕組みが取られている。
東北から関東への冷凍食品輸送を担ってきた運送会社B社の社長は、この夏、自分の判断を後悔していた。同業他社が「物流の2024年問題(以下、2024年問題)」を機に長距離輸送から次々と撤退するなか、B社は
「それでも誰かが長距離輸送を守らなければならない」
と考え、無理を承知で輸送量の増加を引き受けた。その結果、現場は大混乱に陥った。
長時間運行によるドライバーの負担が増えただけでなく、無理な受注の影響で冷凍食品の一部が溶けるという商品事故まで起きてしまったのだ。
「モノを運ばなければならない」
という使命感から、自己犠牲を覚悟して対応したものの、結果としてB社が被った損失は想定をはるかに超えるもので、社長は深く後悔している。