「スマートIC」の認知度わずか3割! 渋滞解消の切り札なのに、導入が進まない本当の理由とは?

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スマートインターチェンジは、高速道路の渋滞解消や運営効率化を実現する注目の技術。しかし、導入には高い初期費用や地域の合意形成が障害となり、普及には時間がかかっている。実際、認知度は約3割にとどまり、普及促進が急務だ。

今後の展望と成功事例の共有

水戸北スマートIC(常磐自動車道)(画像:国土交通省)
水戸北スマートIC(常磐自動車道)(画像:国土交通省)

 スマートICの普及には、技術的な課題だけでなく、社会的な課題も解決する必要がある。まず、ドライバーへの認知度向上が重要だ。スマートICの利便性を十分に理解しているドライバーが少ないため、利用促進のための啓発活動が必要となる。例えば、ETCを使えばスムーズに高速道路を利用でき、交通渋滞を避けられるという利点を伝えるキャンペーンが効果的だろう。

 また、成功事例の共有もスマートIC普及に向けた重要なステップとなる。国土交通省が発表した改善案をいくつか紹介する。

 まず、2009(平成21)年4月に本格運用が始まった北陸自動車道の流杉・スマートIC(富山県富山市)では、運用開始に合わせて周辺施設が整備され、企業団地の誘致が進んでいる。具体的には、富山市第二機械工業センター周辺に新たな企業が進出し、地域経済が活性化している。また、富山市は流杉スマートICを生かして産業立地を誘導するため、基本構想の策定を始めた。

 他にも、常磐自動車道の三郷スマートIC(埼玉県三郷市)ではアクセス性が向上し、平日は通勤や仕事に、休日は観光やレジャー、大型商業施設へのアクセス向上にも寄与している。また、山陽自動車道の吉備スマートIC(岡山県岡山市)では、市北西部から市中心部までの移動時間が約8.6分短縮され、救急搬送の効率化にもつながっている。実際に、吉備スマートICの供用後3年間で救急搬送が44回に達している。

 さらに興味深いデータもある。2015年9月に行われた府中スマートIC(東京都府中市)の利用状況に関するアンケート調査では、利用者の約9割が利便性や時間短縮効果を実感しており、今後も利用すると回答した人も9割を超えていた。

 そして、スマートICの普及にはETCの普及も欠かせない。現在、ETCの普及率は約94.2%に達しているが、完全な普及には至っていない。高価なETC車載器の価格を引き下げるための助成金制度の導入や、クレジットカードを持っていなくても作成できるETCパーソナルカードのデポジットの下限を引き下げるなど、利用環境の改善が求められる。

 このように、ETCの普及を進めるためには価格の問題や利用環境の改善が必要であり、それがスマートICの普及促進にもつながるだろう。

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