「EVシフト」は工作機械メーカーも変革する! 金属加工は減少し、新工法の波が到来だ
EV化加速の影響力
自動車業界はこの数年、「EVシフト」と呼ばれる大きな流れに飲み込まれて、内燃機関のエンジン車から電気自動車(EV)への移行が進んでいる。EVシフトによって車の部品構成が大きく変化するため、自動車メーカーやサプライヤーはその対応に追われているが、工作機械の分野でも変革が進んでいる。
工作機械は部品製造に欠かせない設備で、ひとつの部品を製作するためには多くの工作機械が必要だ。自動車の部品には金属製品が多く使われており、所定の形状や寸法に加工するためには旋盤やフライス盤、ボール盤などの複数の加工機械が必要だ。また、複数の加工を1台で行えるマシニングセンターという自動機械も使われる。
工作機械は工作機械メーカーによって製造され、自動車メーカーやサプライヤーに納入される。国内メーカーの工作機械は、高い精度と耐久性を持ち、世界中に輸出されている。これまで、世界中の自動車メーカーはガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を搭載した車が基本であり、それに合わせた工作機械も世界中で使われてきた。
工作機械コスト半減の未来
EVシフトにより、車全体の部品点数は3万点から2万点に減少するといわれている。特に、動力源がエンジンからEVモーターに置き換わることで、多くのエンジン関連部品が不要になる。
エンジン部品は細かい機械金属部品が多数必要だが、EVのモーターやインバーターなどは電気・電子部品の塊であり、比較的シンプルな構成になる。そのため、EV化にともない自動車全体での金属加工の必要性が減少し、それに必要な工作機械も多くが不要になると予想されている。
日本政策投資銀行が2018年に発表した資料によれば、従来の自動車産業における設備投資の内訳では、金属工作機械が
「9%」
を占めていたが、産業用電気機械などではわずか1%にまで減少している。EVシフトによっても、同様に大きな変動があると考えられている。
また、自動車生産1台あたりの工作機械のコストは約1万5000円と試算されているが、EV化によって約半額の7000円まで落ち込むと見込まれており、自動車向けの工作機械全体の需要は一時的に低下する見込みだ。