震災から13年 「陸前高田市」の観光復活は可能か? カギとなるBRTアクセスの壁と新海誠作品【連載】移動と文化の交差点(8)

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陸前高田市の復興と観光振興が進行中。2023年度の観光客数は120万人を超え、震災前の水準に戻りつつある。新海誠の映画『すずめの戸締まり』が地域の魅力を再発見させ、希望を与える一方、公共交通の充実が観光促進の鍵となる。

『すずめの戸締まり』の舞台、陸前高田の聖地

映画『すずめの戸締まり』公式サイト(画像:『すずめの戸締まり』製作委員会)
映画『すずめの戸締まり』公式サイト(画像:『すずめの戸締まり』製作委員会)

 観光振興には行政も注目している。周辺には、有機農業テーマパーク「陸前高田ワタミオーガニックランド」や「スノーピーク陸前高田キャンプフィールド」などが開設された。

 また、海水浴場も再整備され、徐々に集客装置が増えている。陸前高田市によると、2023年度の観光客数は120万人を超え、震災前の100万~180万人から、震災後には20万人まで落ち込んでいたが、少しずつ震災前の状況に戻りつつある。

 コンテンツ面では、新海誠の映画『すずめの戸締まり』に陸前高田市が2か所描かれている。この作品は2022年に劇場公開され、国内での終映までに1115万人を動員し、147.9億円の興行収入を記録した。

 物語は、宮崎県の静かな町に住む17歳の鈴芽(すずめ)が「扉」を探している青年に出会うところから始まる。彼を追いかけた鈴芽は、山のなかの廃墟にある古い扉を見つけ、次第に日本各地にある扉が開き始め、彼女はその扉を閉める旅に出る。

 鈴芽が目指したのは、かつて母と住んでいた東北で、そこは震災で廃墟になっていた。彼女がそこで見つけた自分の絵日記には、3月11日以降が黒く塗りつぶされていた。明らかに東日本大震災を意識した物語となっている。この南から北へ向かうロードムービー的な作品のラストシーンは、リアス式で有名な三陸海岸のほぼ中央に位置する山田町にある織笠駅(三陸鉄道)で、鈴芽と青年が別れる場面だ。

 陸前高田市では、米崎町脇之沢漁港付近の道路風景や堂の前が描かれ、ファンの間で“聖地”となっている。織笠駅に比べて印象は薄いものの、大ヒット作品の聖地として重要な場所である。また、『すずめの戸締まり』は希望がテーマのひとつであり、陸前高田市にその希望を重ねることもできるだろう。

 定住人口が減少するなか、多くの自治体は集客人口の増加に躍起になっている。日本のアニメは海外にも人気があり、インバウンド観光客が陸前高田市やその周辺に訪れる日も近いかもしれない。

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