なぜ岩手県は優秀な人材を輩出し続けるのか? 大谷翔平を育んだ「旧水沢市」で考える【連載】移動と文化の交差点(3)

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大谷翔平だけでなく、近年、岩手県は人材輩出地域として注目されている。その理由を水沢で考えてみた。

大谷翔平の故郷を訪問

JR水沢駅前(画像:増淵敏之)
JR水沢駅前(画像:増淵敏之)

 大谷翔平の結婚報告(2024年2月29日)の数日後、筆者(増淵敏之、文化地理学者)は岩手県の内陸南部に位置する水沢駅(奥州市)にいた。数十年ぶりに市内の「吉小路(きちこうじ)」を歩きたくなったのだ。

 奥州市は2006(平成18)年に

・水沢市
・江刺市
・前沢町
・胆沢町
・衣川町

が合併して誕生し、県内では盛岡市に次いで人口が2番目に多い市となった(現在約11万人)。旧水沢市の人口は約6万人だったため、現在も奥州市の中心地であり、市役所もこの地域にある。

 東京から旧水沢市に行くには、東北新幹線に乗って水沢江刺駅で下車し、そこからタクシーで15分ほどかかる。タクシーの車窓からは、地方でよく見られる郊外型のパワーセンター(大型ディスカウント専門店を集めたショッピングセンター)が見え、商業の中心が都心部から離れていることが推測できる。

 水沢江刺駅には、新花巻駅(花巻市)と同じように大谷翔平(旧水沢市出身)の特設コーナーがあり、さまざまな展示があった。また、日本ポップス界の巨人・大滝詠一のコーナーもあり、彼が旧江刺市出身であることを再確認した。

 岩手県は人材を輩出する地域として注目されている。近年では、大谷翔平のほか

・菊池雄星(盛岡市)
・佐々木朗希(陸前高田市)
・堀田賢慎(花巻市)
・西舘勇陽(一戸町)
・佐々木麟太郎(北上市)

と多士済々(たしせいせい。すぐれた人材がたくさんいること)だが、春夏を通じて甲子園で優勝した高校はまだない。ちなみに政治家の小沢一郎も、3歳から中学2年まで水沢で過ごした(出生地は東京都台東区)。

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