日本企業が学ぶべきレジリエンスの源流【短期連載】なぜいま岡倉天心なのか(2)

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国際的な危機が物流とサプライチェーンのレジリエンスを再認識させるなか、岡倉天心が提唱する「柔弱の思想」と老子の「虚」の概念が注目される。変動性が増す現代、柔軟性と適応力が企業の復元力を支え、危機を乗り越える鍵となる。

東洋思想とビジネス界の融合

『友よ、 水になれ――父ブルース・リーの哲学』(画像:亜紀書房)
『友よ、 水になれ――父ブルース・リーの哲学』(画像:亜紀書房)

 実は、世界的なカンフー・ブームを巻き起こした武道家のブルース・リーは、老荘思想をはじめとする東洋思想に精通していた。

 彼が自らの武道のみならず、人生に取り入れていたのが、「柔弱の思想」と

「水の哲学」

であった。それは、彼の実娘シャノン・リーにも継承されており、彼女がブルースの哲学について述べた『友よ、水になれ 父ブルース・リーの哲学』(亜紀書房)は、まさに現代版『老子』といってもいい過ぎではない。そこには、次のように書かれている。

「心を空にしろ。型を捨て、形をなくせ。水のように。コップにそそげば、水はコップの形になる。…ボトルにそそげばボトルの形になる。水は静かに流れることもでき、激しく打つこともできる。友よ、水になれ」

 現在、老子の思想は欧米の思想家だけでなく、経済界や産業界でも注目されている。例えば、英国人研究者のクリスティン・スポンスラーやシモーネ・オズボーン、米国人研究者のバート・アンダーソンが運営する「レジリエンス」というサイトも、老子の思想に焦点を当てている。

 いまこそ、天心の著作を通じて東洋思想の現代的な価値を考える必要があるのだ。

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