富山ライトレールは本当に成功したのか? 再開発は富山駅前「一人勝ち」の現実、中心商店街は地価苦戦 公共交通改革の光と影を考える

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富山市のLRT導入で公共交通の成功例が明らかになった。駅前再開発が進む富山駅周辺は若者に人気が集まり、商業地の地価は最大5.4%上昇。一方、伝統の中心商店街「総曲輪」は苦境に直面している。都市再生の難しさと新たな住宅地としての注目も浮き彫りになった。

繁華街維持の限界

総曲輪(画像:写真AC)
総曲輪(画像:写真AC)

 これは、総曲輪が

「商業地としての役割」

を終えつつあることを示唆している。現在の「お団子と串」型のコンパクトシティ政策では、複数の地域拠点を持つことが有効とされている。しかし、拠点よりも規模の大きい繁華街を複数持つためには、相応の都市規模が求められる。

 成功例として福岡市が挙げられる。福岡市は人口約150万人で複数の繁華街を有効に運営している。一方、熊本市(人口約74万人)でもJR熊本駅前を新たな都市の中心にしようと開発が進められているが、まだ成果は明確ではない。

 地方都市が複数の軸を持つには、人口70万人以上の規模、政令指定都市レベルの規模が求められるという考え方が一般的だ。そのため、人口約41万人の富山市では、富山駅前と総曲輪のふたつの繁華街を維持するのは困難といえる。

 しかし、商業地としての発展が難しいからといって、総曲輪の価値が完全に失われるわけではない。実際、総曲輪は市内中心部の住宅地として非常に高い価値を持っている。例えば、2019年には「プレミストタワー総曲輪」といった23階建てのマンションが完成し、2027年には中央通りに24階建ての高層棟や7階建ての低層棟、スケート場、商業施設を含む複合施設が開業する予定だ。

 富山市は元々持ち家率が高いが、最近では除雪作業など、管理の手間が少ないマンションが人気を集めている。2022年には、新築マンションの分譲戸数が前年の

「3.2倍」

に増加し、全国でもトップクラスの伸び率を記録した。特に「電停が近い」という点が、新築マンションの強みとなっている。このため、電停に近く、文化施設も充実した総曲輪は、新たな住宅地として注目されるだろう。

 富山市の経験は、都市計画が“机上の理論”だけでなく、実践を通じて最適解を見つける必要があることを示している。新たな都市投資には慎重な意見も多いが、富山市の事例は、柔軟な対応と継続的な評価・改善が都市再生のカギとなることを教えてくれている。

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