EVと気候変動対策の岐路! 米大統領選がもたらす激変の予兆とは
11月の米大統領選挙は気候変動対策に大きな影響を与える。トランプ前大統領が再当選すれば、パリ協定から再脱退の可能性が高い。バイデン大統領の気候対策を覆す「トリプルレッド」が実現すると、気候政策に大きなブレーキがかかる恐れがある。
IRA法案成立の背景と影響

石炭を産出するウェストバージニア州選出の民主党のマンチン上院議員の反対もあり、法案は紆余(うよ)曲折の末、法人税の最低税率の設定なども盛り込んだ「インフレ抑制法(IRA)」として成立することになる。
IRAによって、例えば、電気自動車(EV)では一般消費者は最大7500ドルの税額控除を受けることができる。ただし、この減税を受けるには完成車の最終組み立てが「北米」(米国、カナダ、メキシコ)であり、さらにバッテリーに関しても、その一定割合が金額ベースで「米国」または「米国と自由貿易協定を締結している国」で抽出・処理されたか、北米で再利用されたものであることが必要になる。
さらに2024年以降は、懸念国の事業体(中国やロシア政府の管轄・指導下にある企業)がバッテリーの部品を一部でも製造していると購入者は減税を受けられないなど、「経済安全保障」の色彩も強くなっている。つまり、IRAは脱炭素とともに、米国国内の雇用の確保、経済安全保障なども一挙に進めていこうという法律なのである。
では、もしトランプ前大統領が返り咲けば、IRAは撤廃されてしまうのだろうか。著者は必ずしもそうなるとは限らないと考えている。IRAの撤回には議会の賛成が必要になるが、IRAの恩恵を受けている地域から選出されている共和党の議員が撤廃に賛成するとは限らず、たとえ、上下両院の多数を共和党が握ったとしても、IRAの撤廃は一筋縄ではいかないというのである。
過去には共和党がオバマケアの撤廃を主張したものの、結局は党内のコンセンサスを得ることができず、上下両院で多数を握りながら撤廃できなかったこともあった。議員個人の独立性が強い米国では、一度決まった法律を撤廃させるのは非常に難しいのである。