EVと気候変動対策の岐路! 米大統領選がもたらす激変の予兆とは
財政調整で進める脱炭素政策

バイデン政権はこの目標をどのように達成しようとしたのか。
ここで問題になるのが米国の特徴的な政治制度である。米国では大統領制をとっており、大統領と議会(上院・下院)の議員は別々に選ばれ、大統領は議会に法案を提出することができない。
大統領の所属政党と議会の上院または下院の多数派が違えば(例えば、大統領が民主党で議会下院の多数が共和党)、大統領の望むような立法は期待できない。さらに上院には「フィリバスター」と呼ばれる議員の発言時間が無制限になっていることを利用して法案を廃案に追い込める仕組みがある。
このフィリバスターを無効にするには全議員の5分の3以上(60議席以上)の賛成が必要であり、大統領が自分の思い通りの法案を通すには下院の過半数+上院の5分の3以上という高いハードルをクリアしなければならない。
パリ協定を締結したオバマ大統領は、上下両院で民主党が多数であったことから排出権取引制度を導入する新規立法を試みたが、上院の60議席のハードルをクリアできなかった。その後、オバマ政権は既存の大気浄化法を使って火力発電所からの温室効果ガスの排出を規制しようとしたが、これは連邦最高裁によって止められてしまった。
そこでバイデン政権は、連邦政府の収入や支出に限定した法案であれば上院の単純過半数で可決できるという「財政調整」と呼ばれる手続きに注目し、脱炭素を進めようとした。
当時の民主党は民主党と連携する独立系の議員と合わせて上院の半数の50議席を確保しており、本会議で賛否が同数であれば上院議長を務めるカマラ・ハリス副大統領の1票で通すことができる状況だった。ただし、財政調整では新たな規制や新たな制度の創出はできないため、脱炭素技術を導入する企業や消費者に減税措置や補助金の交付を行うことによって脱炭素を進める法案が準備された。