EVと気候変動対策の岐路! 米大統領選がもたらす激変の予兆とは
脱炭素投資で温暖化対策が進化
まず、トランプ前大統領が返り咲けばパリ協定からの再度の脱退は確実だと思われる。
前回の就任時は、娘のイヴァンカ、イヴァンカの夫でもある大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー、ティラーソン国務長官の反対などもありトランプ大統領も一時は残留に傾いたといわれるが、スティーブ・バノン首席戦略官やスコット・プルイット環境保護庁長官らが反対し、最終的にはトランプ大統領は2017年の6月1日にパリ協定からの脱退を表明した。
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今回は選挙戦のために立ち上げたウェブサイトでもパリ協定からの脱退をうたっており、就任と同時にパリ協定からの脱退を宣言する可能性が極めて高い。
ただし、前回のパリ協定脱退が他の国の脱退を引き起こすような負の連鎖を起こすことはなかった。それはなぜなのだろうか。
トランプ大統領が脱退を表明しても、締結国が国連へ脱退を通告できるのは協定発効から3年目以降で、さらに脱退通告が効力を持つのは通告から1年後という取り決めがあった。つまり、協定発効が2016年11月4日だったために最短で脱退できるのはその4年後の2020年11月4日であり、それは2020年の大統領選の翌日だった。ここでバイデンが勝利したために米国はすぐにパリ協定に復帰することになった。
また、パリ協定は各国が独自に目標を設定するもので、米国が脱退したからといって自分たちの目標を下げよう、あるいは脱退しようとはなりにくい仕組みだった。さらに、パリ協定以降、温暖化対策を成長への足かせではなく
「脱炭素」
という新たな成長産業への投資という見方が強まっており、負の連鎖は抑制されたのだ。
一方、2021年に就任したバイデン大統領は気候変動対策に前向きだった。バイデン大統領は就任日の2021年1月20日にパリ協定への復帰を国連に通告する。さらに21年4月の気候首脳サミットに合わせて「2030年に、2005年比で50~52%の排出削減」という目標を打ち出した。
米国の2021年の温室効果ガス排出量は2005年比で16%減、およそ1年で1ポイント減のペースで減少しているが、2050年で半減となると、年平均で3.8ポイントの削減が必要になる。