混迷する「北陸新幹線ルート」 あなたは小浜派?米原派? 鉄道ジャーナリストの私は、どう見ても「小浜ルート」一択です

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北陸新幹線のルート選定をめぐる議論は、地域的な利害や意見が複雑に絡み合っている。ここでは、小浜・京都ルートと米原ルートの論点と背景を整理し、それぞれの支持者と主張を見ていく。

小浜派・米原派の主張

米原駅の位置(画像:OpenStreetMap)
米原駅の位置(画像:OpenStreetMap)

 小浜派と米原派の主張はどうなっているのか。小浜派の主張には次のような感じである。

「詳細ルートが示されていないことからの不安があるのでは」
「時間短縮効果が大きい」
「開業後の料金が安い」
「もう決まったことを蒸し返すな」
「米原ルートでは東海道新幹線乗り入れの余裕がなく乗継が固定化される」
「米原ルートでは一部でも東海道新幹線を共用するため災害時の代替性が弱い」
「米原ルートでは小浜ルートより20分余計にかかる」

といったものが挙げられる。どれもごもっともである。特に与党整備委員会委員長の西田議員も京都新聞のインタビューで

「米原ルートでは、全国を新幹線ネットワークでつなげて過疎地域を元気にするという本来の趣旨とも違う」

と発言している。また、米原ルートだと金沢~新大阪間は1時間41分との試算で、小浜ルートより20分余計にかかるそうだが、もう少しかかると思った方がよさそうだ。

 他の線区の事例を見ると、北海道新幹線新青森~奥津軽いまべつ間のように、合流手前の区間は260kmで走れる線路でも210km運転のダイヤにしていたり、東京メトロの小竹向原駅(練馬区)のように合流駅では停車時間を長めにしていたりするなどして、JRは5分くらいは遅れても取り戻せるダイヤにするはずである。

 続いて米原派の主張は、

「着工のハードルが低い方で早く作ってほしい」
「小浜ルートではトンネル掘削で京都の水が枯れる」
「費用対効果で優位」
「建設費安い」
「工期短い」

特に小松市議会の決議文は

「敦賀以西への延伸の見通しは、全く不透明」
「着工条件はむしろ悪化」
「不協和音の強い京都を誰も説得できなかった。今さら誰が説得できると言われるのか」「30年に大阪まで全線開業できると信じている人はもはや1人もいない」

と語気を強めている。

 小浜ルートは当初、総費用2.1兆円に対して総便益が2.3兆円、総便益を総費用で除した費用便益比(B/C)は1.1とされており、ギリギリだった。最近になって近年の資材・人件費高騰で費用が当初の倍に膨らむとの試算も出て、B/Cが1を割るどころか半分の0.5くらいじゃないかといわれている小浜ルートの着工は困難だ。

 対する米原ルートは距離が短いため、事業費は上がるとしても小浜ルートの4分の1、工期は3分の2で済む。所要時間や運賃など便益は不利だが、B/Cは2.2と算出されていた。米原ルートの事業費も膨らむはずだが、仮に費用が倍になっても1以上を確保できる計算だ。着工条件を満たすのは米原ルートしかない、というのが米原派の主張だ。

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