2024年に運航開始 ヤマト「クロネコ貨物機」に見る外資パワーゲームの脅威

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ヤマト運輸は2022年1月、JALと航空貨物で提携すると発表した。同社にとっては悲願の貨物専用機の保有を低コストで実現できることになる。

長距離ドライバーの不足

ヤマトの貨物専用機(画像:ヤマト運輸)
ヤマトの貨物専用機(画像:ヤマト運輸)

 クロネコが空を飛ぶ――。2022年1月国内宅配便最大手のヤマト運輸の持ち株会社・ヤマトホールディングスは、JALと航空貨物で提携すると発表した。

 世界の格安航空会社(LCC)で人気の欧州エアバス製A321機(ceo P2F型)の中古機3機を貨物専用機に改造、長期リースではあるものの、ヤマト自身が所有する。運航はJALグループのLCCであるジェットスター・ジャパンに委託、というビジネスモデルだ。新型コロナの世界的大流行が提携の契機となった。

 ヤマトにとっては悲願の貨物専用機保有を低コストで実現でき、宅配便トラック輸送企業から貨物専用機を擁した総合物流ソリューション企業への布石、という戦略的意味合いも大きい。

 また、コロナ禍で世界の航空旅客需要(特にLCC)は壊滅的で、中古機市場もまさに買い手市場。ヤマトは程度のよい機体を低価格でリースできたはずだ。需要激減に悩むJALやジェットスターとの提携交渉でも、ヤマト側は強気の条件で臨んだことは想像に難くない。ただ、自社保有ではなくても、JALには貨物専用機をラインアップに組み入れられる大きなメリットがある。

 2010(平成22)年の倒産とその後の再建スキームの過程で、JALは貨物専用機を手放す一方、ANAは貨物専用機をグループ内で維持しており、コロナ禍の航空貨物需要増で利益を上げていた。そのため、JALはヤマトの貨物専用機で需要を獲得しようという目算だ。コロナ禍で旅客需要激減のなか、ヤマトの提案はジェットスターにとっても助け船ならぬ「助け航空機」と言える。

 まずは貨物需要が多い首都圏(羽田、成田)を拠点に、

・新千歳(北海道)
・北九州
・那覇(沖縄)

の3路線に投入、運航開始は2024年4月を予定している。

 ちなみにA321の搭載量は28t、ちまたを走るごく普通の大型トラック(10t車)5~6台分に相当する。

 一方、ヤマトにとってはいわゆる「2024年問題」対策という側面もある。2024年4月から、自動車運転業務の年間残業時間は「上限960時間」が義務化、このため長距離トラック・ドライバーの不足が深刻化すること必至なのだ。

 加えて、物流業界が慢性的に抱えるドライバーの高齢化と若手人材の不足への対応や、電子商取引(EC)の爆発的普及によるスピード配送の要望(翌日配送、当日配送など)なども考えると、貨物専用機の自前化は絶妙のタイミングだったと言える。

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