崩壊寸前の路線バス 「真犯人」はお前だ!【連載】ホンネだらけの公共交通論(15)
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筆者が教えている大学でも、学生が公共交通について真剣に学び、考えるようになったのは、大学や大学院に入ってからだという。これが路線バス崩壊の最大の原因ではないのか。
SDGsと交通教育

TOD型都市開発・地域開発の実践を支援する政策、それをコモンセンス(一般常識や日常的な判断力)として広げる交通教育政策、そして学んだ結果として交通政策に真剣に取り組む政治家や政党を選ぶことができる社会的循環が生まれれば、路線バスを取り巻く環境は変わるだろう。
そもそも、政治家のマニフェストで、生活者の移動・交通を売りにしているものがどれだけあるだろうか。実際、そうしたマニフェストは驚くほど少ない。問題は、多くの場所でそうした雰囲気がないことだ。交通を重要な政治・政策課題とする雰囲気を社会に作ることが重要である。そのためには、市民が交通について真剣に考えるような教育が重要である。
将来、路線バスに鉄道駅のバリアフリー運賃のような目的運賃や目的税を検討するにしても、交通教育が公共交通を真剣に考える下地になれば、議論はよりよい方向に進むだろう。生活者の路線バスに対する見方を変える政策は、問題を考える上で非常に重要になるだろう。
折しも、社会はSDGs(持続可能な開発目標)の実現を求められている。つまり、誰ひとり取り残さない社会づくりが重要な局面を迎えているのだ。そのなかで、地域の人々の移動手段を確保することで、誰もが移動し、生活ニーズを満たせる環境を作ることも重要である。
そうしたSDGsの時代だからこそ、交通教育の導入が不可欠である。生活者へのインプットを増やす政策がない現状は大きな問題であり、生活者が公共交通について真剣に考えるきっかけとなるような政策づくりが急務である。公共交通の“目利き”が増えれば、路線バスの経営も好転するだろう。