リニアより北陸新幹線「全線開通」が優先か? 南海トラフに備えた大動脈“二重系化”を再考する

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リニアの使命のひとつは、災害時に首都圏と西日本の交通を途切れさせないことだ。であれば、北陸新幹線の全線開通を優先すべきだろう。

目的「リニア」or「東西交通の確保」

石橋克彦『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震 「超広域大震災」にどう備えるか』(画像:集英社)
石橋克彦『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震 「超広域大震災」にどう備えるか』(画像:集英社)

 今後ルート選定と建設が本格化するリニア中央新幹線の名古屋~大阪間についても、同様に南海トラフ巨大地震による強い揺れと被害が想定されている。ひとたび南海トラフが起これば、東海道新幹線、リニア中央新幹線の

「共倒れ」

も想定されうる。

『リニア新幹線と南海トラフ巨大地震「超広域大震災」にどう備えるか』(集英社)を2021年に著した神戸大学名誉教授の石橋克彦氏は、南アルプストンネルをはじめとする山岳トンネルが複数の断層や破砕帯と交差し、崩落や地下水噴出が想定されることや、乗客の避難路の険しさを挙げた。リニアそのものに疑問を投げ掛ける議論だ。

 リニア建設の是非はおいても、地震に対する安全性は常に検証され続けるべきだし、そもそもリニアの開通は「目的」ではない。

「持続的な東西間の移動に資する輸送機関」

が求められているのである。東海道新幹線の代替機能としては、南海トラフの想定被害が比較的小さい北陸新幹線の方が、リニア中央新幹線よりも優れているといえないだろうか。

 基幹的な交通路の確保は国家的な課題だ。北陸新幹線の敦賀~新大阪間は未着工で、いまだ開通の見通しが立たないが、リニアにも増してスピードアップすべきだろう。

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