リニアより北陸新幹線「全線開通」が優先か? 南海トラフに備えた大動脈“二重系化”を再考する

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リニアの使命のひとつは、災害時に首都圏と西日本の交通を途切れさせないことだ。であれば、北陸新幹線の全線開通を優先すべきだろう。

東海道新幹線の不通は「国家的懸念」

南海トラフ巨大地震の想定震度の最大値の分布図。中央防災会議「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)」(2013年5月)を元に作成(画像:JR東海)
南海トラフ巨大地震の想定震度の最大値の分布図。中央防災会議「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)」(2013年5月)を元に作成(画像:JR東海)

 東海道新幹線にとって、最も懸念される災害のひとつが、南海トラフ巨大地震だ。

 国の国土強靱(きょうじん)化基本計画(2023年7月改定)は、南海トラフなどの大規模災害が発生した際の「起きてはならない最悪の事態」を、35項目にわたって例示している。

 そのなかで

「太平洋ベルト地帯の幹線道路や新幹線が分断するなど、基幹的陸上、海上、航空交通ネットワークの機能停止による物流・人流への甚大な影響」

と具体的に新幹線を挙げ、「情報通信サービス、電力等ライフライン、燃料供給関連施設、交通ネットワーク等の被害を最小限にとどめるとともに、早期に復旧させる」と掲げた。新幹線の不通にともなう東西交流の断絶は、国家的な懸念とされているわけである。

 内閣府がまとめた南海トラフの被害想定によると、新幹線は210~290か所が被災。震度分布を見ると、東海道新幹線の沿線では震度7~6強という強い揺れが想定されている。新潟県中越地震(2004年10月)や東日本大震災(2011年3月)など、これまでの大規模地震の被害を踏まえれば、復旧までの時間は1か月単位となることも覚悟しなければならないだろう。

 これに対し、北陸新幹線が通る日本海側の各県は、南海トラフの震度分布では

「震度5弱~4程度」

で、被害は東海道新幹線よりも小さいことが想定される。

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