リニアより北陸新幹線「全線開通」が優先か? 南海トラフに備えた大動脈“二重系化”を再考する
リニア、南海トラフ「二重系」への可能性

では、東海道新幹線の災害に備えた「二重系」と位置付けられ、建設が進められているリニア中央新幹線はどうだろうか。
JR東海は、自社のウェブサイトで、2011年の交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会の答申を次のように引用し、災害対策としての存在意義を強調する。
「中央新幹線の整備は、速達性向上などその大動脈の機能を強化する意義が期待されるのみならず、中央新幹線および東海道新幹線による大動脈の二重系化をもたらし、東海地震など東海道新幹線の走行地域に存在する災害リスクへの備えとなる。今般の東日本大震災の経験を踏まえても、大動脈の二重系化により災害リスクに備える重要性がさらに高まった」
建設を推進する沿線自治体も、同様の立場だ。例えば、山梨県は災害時の輸送路としてリニアを活用することを想定し、次のようにアピールする。
「リニアは速達性と地震時の安全性に優れており、山梨県に大規模な地震などが発生した場合は、リニアによって県外から速やかに救援部隊や薬品などの支援物資が到達することが可能になります。また県外で災害が発生した場合は、山梨県に人員や物資を集積し、リニアを活用して被災地の支援を行うことが可能となります」
とはいえ、南海トラフの震度分布を見れば、内陸部を通るリニアも、震度6弱のエリアを通過する。東海道新幹線と接続するターミナルの名古屋駅は、特にネックとなり得る。
名古屋市の想定では、同駅の位置する中村区の最大震度は7で、区内まで津波の到達が見込まれている。駅自体は浸水域に色分けされていないものの、液状化の可能性は「大」と評価されている。駅を含めた周辺の都市機能が停止を余儀なくされる懸念は大きい。一部区間で復旧したとしても、東京~名古屋間の一体的な
「東西輸送」
には不透明感がある。