リニアより北陸新幹線「全線開通」が優先か? 南海トラフに備えた大動脈“二重系化”を再考する

キーワード :
, , ,
リニアの使命のひとつは、災害時に首都圏と西日本の交通を途切れさせないことだ。であれば、北陸新幹線の全線開通を優先すべきだろう。

大雨で発揮された代替機能

リニア中央新幹線(画像:写真AC)
リニア中央新幹線(画像:写真AC)

 2023年6月2日から3日にかけて、台風接近にともない発生した線状降水帯の影響で、東海道新幹線は長時間にわたる運転見合わせを余儀なくされた。東西の大動脈がストップしたことで各駅に立ち往生する旅客の姿がメディアで報じられたが、この時に注目されたのが、北陸新幹線を介した迂回乗車だった。

 当時の北陸新幹線の終点は金沢。東京から関西方面へ行く場合、東京~金沢間を北陸新幹線、金沢~大阪間は在来線の特急を利用するルートだった。トータルの所要時間は5時間余りで、東京~新大阪間を2時間半足らずで結ぶ東海道新幹線に比べれば倍以上となったが、利用者にとっては迂回路の存在が心強かった。2024年3月に敦賀まで延伸開業したことで、同ルートの所要時間は現在、4時間45分程度に短縮されている。

 実際、北陸経済連合会は北陸新幹線開業前の2011(平成23)年の時点で、東海道新幹線を代替する機能に着目し、国家プロジェクトとしての早期全線開通を訴えた。

 想定では、東海地震が発生し、東海道新幹線の東京~名古屋間が不通になった場合の影響を試算。影響人数は1日約20万人、出張や旅行の取りやめにともなう経済損失は

「50億円」

に上るとした。一方で、北陸新幹線が新大阪まで全通し、補完機能が最大限に発揮されれば、1日に約10万人の輸送が確保でき、経済損失は26億円に抑えられるという。その機能回復を47%と評価した(現在の終点である敦賀まででも33%まで回復できると試算された)。

 北陸新幹線回りの東京~新大阪間の所要時間は、3時間半程度と想定されている。東海道新幹線よりも1時間ほど余計にかかるが、非常の迂回ルートとしては十分だろう。東日本大震災で東北新幹線が不通になった際は、在来線の臨時列車が代替輸送を担ったが、北陸新幹線が全通すれば、在来線を使わず、

「速度も輸送力も格段に優れた新幹線」

で補完できるようになるわけである。

全てのコメントを見る