再現事故がリアル過ぎ? 交通安全教室の“怖がらせ教育”は本当に有効なのか

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近年、さまざまな研究によって、子どもたちへの「怖がらせる教育」には限界があることが明らかになっている。なぜだろうか。交通教育から読み解く。

リスク認識と安全教育の改善

通学路の標識(画像:写真AC)
通学路の標識(画像:写真AC)

 ここまでの内容は、学校などでの集団教育の話だが、これは例えば親が子どもに道の歩き方を教えるような個人の教育にも当てはまることかもしれない。

 例えば、子どもが道路に飛び出しそうになって、それを慌てて引き止めた状況を考えてみよう。どんな恐ろしい結果が待っているのか、今の行為がどんなに危ないかを伝え、二度としないように怒ることもできる。

 このような教育は子どもの印象にも強く残るので、一時的には効果的だろう。しかし「怒られたこと」が印象に残るので、子どもは交通事故を回避するという本来の目的ではなく

「親に怒られないためにはどうすればよいか」

を考えるようになってしまうかもしれない。

 もちろん、子どもが道に飛び出したりする経験は、親にとっては恐怖そのものだ。頭ではわかっていても、つい怒ってしまう気持ちはよくわかるし、筆者(島崎敢、心理学者)にもそのような経験がある。

 こういうときは、感情的になってしまったことを素直に謝り、どうして感情的になってしまったか、理由を話してあげてほしい。そして双方が落ち着いたら、どうすれば怖い思いをしないで済むかをしっかりと伝え、うまくできたら褒めてあげて、リスク回避の自己効力感を高めてあげてほしい。

 そうすることで、子どもたちに自然と何が危険か、どうすれば危険を回避できるかを考える姿勢が育まれ、他のリスクにも応用が利くようになる可能性もある。子どもたちの安全のために怖がらせる教育ではなく、ぜひ

「考えさせる教育」

をしてほしい。

 間もなく小学校1年生は人生で最も交通事故のリスクが高い時期を迎える。この時期の安全教育はとても大切だ。ちょうど去年の今頃、当媒体で「春の新生活を襲う「小学生の交通事故」子どもの認知機能は想像以上に未発達、保護者が避けるべきは「左右よく見る」という、大ざっぱな注意方法だ」(2023年4月11日配信)という記事を書いたので、こちらも併せて参考にしてほしい。

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