バス・タクシーの乗務員はなぜ「名前表示」が義務付けられていたのか? 京王バス「ビジネスネーム導入」で考える
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ビジネスネーム制度、安心感確保

しかし、一方で、改正には問題点も指摘されないわけではなかった。乗務員の氏名が非表示となることで、誰が運転しているのかわからなくなり、乗客に不安を与えかねない側面があるためだ。
とりわけタクシーでは不安を感じる乗客も少なくないようだ。『読売新聞』2024年1月14日付朝刊に掲載された記事では、名札廃止の話題を取り上げ、タクシー利用者の声を紹介している。
ここでは「乗務員の顔が分かれば、名札がなくても気にならない」という意見がある一方で
「乗務員とは初対面。名前が掲示されていた方がいい」
という声もあったとしている。乗務員の氏名がわからない状態では、安心して乗車できないと感じる利用者も少なくないわけだ。実際、女性のひとりでの利用などでは気にする人がいることは否めないだろう。
こうした課題に対する解決策のひとつとして、京王電鉄バスグループが導入したビジネスネーム制度は実に優れた制度だといえる。実名ではなく、乗務員が自由に設定した名前を表示するこの方式は、プライバシー保護と乗客の安心感の両立を図る上で非常に有効だ。
ビジネスネームは、乗務員の個人情報を完全に隠す「無名化」とは異なり、利用者に対して一定の情報を提供する。それでいて、本名ほど特定につながるリスクはない。つまり、
「プライバシー保護と利用者の安心感のバランス」
を取るための、理想的な方策といえるのだ。
コールセンターなどの接客業でも、オペレーターがビジネスネームで応対するケースは珍しくない。聞き慣れない名前でも、相手の氏名を認識できるだけで安心感は大きく異なる。乗務員との会話のきっかけづくりにもなり、トラブル防止や利用者満足度の向上にもつながるだろう。
乗務員の安全と尊厳を守りながら、利用者の信頼と満足を得ていく。それはバス・タクシー業界に課せられた共通の使命だ。ビジネスネーム導入は、その両立を目指す上で、各事業者が積極的に検討すべき選択肢のひとつではないだろうか。