バス・タクシーの乗務員はなぜ「名前表示」が義務付けられていたのか? 京王バス「ビジネスネーム導入」で考える
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京王電鉄バスグループが、バス車内に掲示する乗務員名について、本名とは異なる「ビジネスネーム」を選択できる制度を導入した。そもそも、なぜバスやタクシーに乗務員名の表示が義務付けられたのか。
関連省庁の対応
実際、現在では、名札の着用は労働者にとって不安の要素が強いもののようだ。
弁護士ドットコムが2023年8月に実施した調査によると、名札を付けての接客経験者の22.4%がカスタマーハラスメントの被害にあったと回答している。こうした実態を踏まえれば、氏名表示の廃止は従業員の安全とプライバシーを守るために必然的な流れだったといえる。この調査でも、接客スタッフの名札に実名を出さない取り組みについて、7割以上が賛成意見を示している。
つまり、バス・タクシー業界での名札の廃止は、文字通り「時代の必然」だったのである。
問題の浮上が、ちょうどSNSを通じた名誉毀損(きそん)や誹謗中傷が社会問題として取り上げられていた時期と重なったこともあってか、関係省庁の対応は素早かった。2022年6月には厚生労働省が、医薬品医療機器法の施行規則で名札着用が義務付けられている薬剤師らについて、カスハラ防止のため「姓のみ」や「氏名以外の呼称」を認める通知を出している。国土交通省でも、2022年4月に法改正を決め同年8月に施行した。
こうして「道路運送法施行規則等の一部を改正する省令及び関連告示」が公布されバス、タクシー内での乗務員等の氏名掲示が廃止された。タクシーでは運転者証等の様式も変更され、利用者に表示する面から氏名、顔写真、運転免許証の有効期限が削除された(ただし、運転者証等としての機能を保持するため、氏名等は利用者から見えない面に記載される)。
この改正を受け、全国各地のバス・タクシー事業者では、相次いで、乗務員の氏名表示を廃止することとなった。