バス・タクシーの乗務員はなぜ「名前表示」が義務付けられていたのか? 京王バス「ビジネスネーム導入」で考える
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京王電鉄バスグループが、バス車内に掲示する乗務員名について、本名とは異なる「ビジネスネーム」を選択できる制度を導入した。そもそも、なぜバスやタクシーに乗務員名の表示が義務付けられたのか。
乗務員氏名表示の起源
京王電鉄バスグループ(京王電鉄バス・京王バス)は、2023年4月1日から、車内で掲示する乗務員の氏名について、本名とは異なる「ビジネスネーム」の選択を可能にする制度を導入した。この制度は、乗務員のプライバシー保護を目的としており、乗務員は任意でビジネスネームか本名の掲示を選択できるようになった。
乗務員が選択するビジネスネームは「山田太郎」のように氏名形式で、漢字・ひらがな・カタカナが使用可能だ。これまでどおり、選択されたビジネスネームは車内の運賃表示板に掲示される。また、制度の導入にともない、乗務員はバスに乗車して運転する際、胸のネームプレート(胸章)を外すことになった。
ビジネスネームの導入は、2023年8月の法改正で、バスやタクシーの乗務員の氏名を掲示する義務が廃止されたことを受けての措置である。
では、そもそも、なぜバスやタクシーでは乗務員の氏名表示が義務付けられていたのだろうか。その起源は、1956(昭和31)年に定められた「旅客自動車運送事業運輸規則」にさかのぼる。
当時は、無謀運転を繰り返す「神風タクシー」などが社会問題となっていたため、乗務員に
「プロとしての自覚」
を促すために氏名の表示が義務化されたようだ。この後、タクシーでは1970年に、タクシー業務適正化特別措置法の施行規則で顔写真の掲示も義務化されている。
これはバス・タクシーで乗務員の意識向上に一定の成果があったようだ。