数減らす列車の「動力集中方式」 世界的に「分散式」へなぜ変化? なおも集中式貫く国も
ヨーロッパならではの事情で顕在化してきた動力集中方式のデメリット

日本の列車では、編成の数か所に動力を持つ「動力分散方式」、すなわち電車や気動車が主流となっている。電車や気動車は前後に運転台を持つため、1両の機関車が何両もの客車を牽引する列車とは異なり、終点に到着すればそのまますぐに折り返すことができるといったメリットがある。
この効率性が、日本が他国と比較して動力分散方式の電車や気動車が発達した理由の一つ。世界トップクラスの大量輸送を実現するために高密度運転を行う必要から考えられた結果だ。いまの日本で機関車牽引の客車列車というのは、JR九州のクルーズ列車「ななつ星」や、保存された旧型車両くらいしか見られなくなった。
効率性で動力分散方式が優れているという点は、いまや日本のみならず、世界でも同様の認識となっている。これまで、地下鉄や都市近郊の鉄道など都市圏で運行される列車を除き、機関車牽引の客車列車による「動力集中方式」が主流だったヨーロッパも、21世紀へ入ってから動力分散方式の優位性が徐々に浸透していき、高速列車を中心に動力分散方式の導入に傾きつつある。
第二次世界大戦後のモータリゼーション進展によるマイカーの普及と、航空機の大衆化により、特に20世紀のヨーロッパは鉄道斜陽化の時代であった言えた。航空機に対して所要時間の面で鉄道は太刀打ちできず、自由に移動できるマイカーに対しても優位性を見出すことができず苦戦していた。加えて、とりわけ大都市のターミナルで見られる頭端(行き止まり)式の駅では、複数の線路が交差する駅入り口付近のボトルネック部分が輸送上の大きな障害となっており、またそれを起因とする慢性的な遅延も問題となっていた。
所要時間の短縮を極力進める上で最も有効な手段は、駅に到着した後に機関車の付け替えを必要とせず、加速性能も良い電車や気動車に置き換え、効率化を進めることだった。