「盗んだバイクで走り出す」 尾崎豊の名曲『15の夜』に出てくるような非行少年を近年見かけなくなったワケ

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「盗んだバイクで走り出す」という歌詞で知られる尾崎豊の約40年前の名曲『15の夜』。最近の若者は盗んだバイクで走り出しているのだろうか。

1983年にリリースされた名曲

昭和のバイクのイメージ(画像:写真AC)
昭和のバイクのイメージ(画像:写真AC)

 シンガーソングライター・尾崎豊の名曲『15の夜』は1983(昭和58)年12月にリリースされた。「盗んだバイクで走り出す 行き先もわからぬまま 暗い夜の中へ」という歌詞は、尾崎ファンならずともよく知られている。

 ファーストアルバム『十七歳の地図』と同時にリリースされたこのデビューシングルは、同時代を生きた者にとっては今でも忘れられない曲だ。2023年11月にはデビュー40周年を記念したミュージックビデオがユーチューブで公開され話題となった。

 ただ、時代は大きく変わった。当時はやるせない青春の気持ちを共感的に表現していた「盗んだバイクで走り出す」という歌詞も、いまでは冷静に

「単なる犯罪」

だと指摘される。もはや「盗んだバイクで走り出す」若者はいなくなったのだろうか。

バイクの窃盗件数、40年で96%減少

『15の夜』を収録した尾崎豊のアルバム『十七歳の地図』(画像:ソニー・ミュージックレコーズ)
『15の夜』を収録した尾崎豊のアルバム『十七歳の地図』(画像:ソニー・ミュージックレコーズ)

『警視庁の統計』によると、1980(昭和55)年から現在(最新統計は2022年)までの東京都におけるバイクの窃盗件数(データ内では「オートバイ盗」と表記。以下、文中ではオートバイをバイクとする)は次のとおりである。

1980年:1万6315件
1981年:2万941件
1982年:1万9236件
1983年:2万3736件
1984年:2万475件
1985年:2万335件
1986年:2万1797件
1987年:2万271件
1988年:2万4140件
1989年:2万8485件
1990年:2万9131件
1991年:2万8828件
1992年:2万7572件
1993年:2万8227件
1994年:2万6522件
1995年:2万8644件
1996年:2万7181件
1997年:2万6606件
1998年:2万7883件
1999年:2万5548件
2000年:2万8058件
2001年:2万2305件
2002年:1万8027件
2003年:1万5496件
2004年:1万2508件
2005年:8856件
2006年:9381件
2007年:8202件
2008年:7262件
2009年:6548件
2010年:6709件
2011年:6429件
2012年:5023件
2013年:3926件
2014年:3045件
2015年:3207件
2016年:1940件
2017年:1730件
2018年:1515件
2019年:1133件
2020年:995件
2021年:722件
2022年:834件

同資料にはこれらのほか、

・非侵入窃盗総数(家屋に侵入しない窃盗の総称)
・自動車盗
・自転車盗

の件数も示されている。

 1983年には2万3736件あったバイクの窃盗は、2022年には834件(約96%減)にまで減少している。1983年には家屋に侵入しない窃盗の約15%をバイクの窃盗が占めていたが、2022年には約1.7%までとなった。

 では、東京都内だけで年間2万件を超えるバイクの窃盗は、どのような背景で発生しているのだろうか。参考になるのは過去の新聞報道である。

 過去の新聞報道を見ると、1980年代前半は暴走族などの非行少年によるバイクの窃盗が目立っていた。例えば、1984(昭和59)年10月には、江東区で暴走族に所属する少年4人がバイクを使ったひったくり事件8件に関与したとして逮捕され、自供によってバイクの窃盗を50件も起こしていたことが明らかになった。

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