「盗んだバイクで走り出す」 尾崎豊の名曲『15の夜』に出てくるような非行少年を近年見かけなくなったワケ

キーワード :
,
「盗んだバイクで走り出す」という歌詞で知られる尾崎豊の約40年前の名曲『15の夜』。最近の若者は盗んだバイクで走り出しているのだろうか。

全国的な問題だったバイク・自転車窃盗

昭和のバイクのイメージ(画像:写真AC)
昭和のバイクのイメージ(画像:写真AC)

 この時期、日本では全国的な治安悪化による犯罪件数の増加が深刻な問題となった。1985(昭和60)年には全国の犯罪件数が160万件を超え、終戦直後の混乱期よりも悪化していると指摘されてた。

 そのなかで犯罪件数を押し上げたのが、バイクや自転車の窃盗である。これらの犯罪の主な参加者は18歳未満の少年だった。『朝日新聞』1986年2月3日朝刊は、この状況を次のように分析している。

「例えばオートバイ盗で昨年逮捕されたり補導された人は約3万6000人だった。少年がそのうち実に97%を占めた。自動車盗は60%、自転車盗は34%が少年だった。13歳以下は「犯罪少年」でなく、「触法少年」として保護の色を強めて扱われるが、これを計算に入れると、少年の比率はさらに上がる。59年の例だと、乗り物盗では6万4000人の少年が補導されたが、この外に13歳以下の1万3000人の小中学生も補導された。非侵入盗でも自動販売機荒らしで逮捕・補導された人の76%が少年だったのを始め、増加した各罪種で犯罪者の過半を少年が占めた」

つまり、尾崎豊が「盗んだバイクで走り出す」と歌っていた時代には、実際に何気なくその行為に及んでいた少年が多数いたのである。

 当時の新聞記事は、バイクや自転車の窃盗、万引きなどに罪悪感の薄い少年が増えていることを社会問題として繰り返し取り上げていた。社会問題として認識されても犯罪件数は減ることはなく、経済的には恵まれていたはずのバブル期にも増え続けた。

 特に少年犯罪の大半を占めるのがバイク・自転車の窃盗と万引きで、1989(平成元)年には18歳未満の少年が刑法犯全体の52.1%を占めるという異常事態となった。いずれにせよ、バイク・自転車の窃盗は万引きとともに少年犯罪の典型例だった。

全てのコメントを見る