JR東のSuicaデータ「販売検討」に不安の声も 利用者が知っておくべき「功罪」両面とは
Suicaの利用データが持つ多大な価値

8000万枚超の発行数を誇るJR東日本のICカード乗車券「Suica(スイカ)」。同社は2022年1月、このSuicaの利用データの販売を検討すると発表した。同社は2013年、利用者の情報を他社に提供したことで批判を受け、中止に至った経緯がある。今回の発表にも、インターネット上では個人情報流出などを懸念する書き込みが散見された。Suicaデータ利活用の是非をあらためて考える。
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JR東日本のICカード乗車券Suicaは、2021年11月に発売から20周年を迎えた。発行枚数は8759万枚。スマートフォンと一体化した「モバイルSuica」の会員数は1000万人を突破した(いずれも同年9月末時点)。
Suicaで集まる情報は、JR東日本にとっての“宝の山”だ。Suicaには乗車券だけでなく電子マネーとしての機能もあるので、Suicaシステムのサーバには、多くの自治体や企業が欲しがる膨大な情報(ビッグデータ)が日々蓄積されている。
このビックデータは、JR東日本の社内におけるサービス改善や輸送の効率化にすでに生かされているが、もし社外に提供できれば、大きな付加価値を生み出すことができる。
これまで公開されていた各駅の1日平均の乗車人員数に加えて、利用者の年齢層や利用時間帯、移動経路などを含む細かなデータは、人の流れをより正確に把握することに役立ち、まちづくりや駅周辺のビジネスを一変させる可能性を秘めているからだ。
そこで同社は、2022年1月20日(木)に「駅カルテ」の作成を発表した。これは、Suicaデータから駅ごとに統計情報を抜き出し、レポート化したものだ。今後は同社のサービス向上に活用するだけでなく、自治体をはじめとする社外への販売を検討するという。
この発表に至るには、“約9年のブランク”があった。あらためてふり返ってみよう。